指定校推薦とどう付き合うか――「狙う」と決める前に知っておきたい実務
中3〜高3
「指定校推薦って、学年でひと握りの優等生だけのものですよね」――面談でこう切り出されることがよくあります。保護者の方ご自身の学生時代は、たしかにそういうものだったかもしれません。けれども今は、大学への進み方そのものが多様になり、推薦で進学することはごく普通の選択肢になっています。この感覚のずれがあるままだと、高2・高3になって初めて実務に直面して慌てることになります。仕組みと日程の急所だけ、先に整理しておきましょう。
そもそも指定校推薦とは――勝負の場が「学校の中」にある入試
指定校推薦は、大学が「この高校からは毎年ここまで」という推薦の枠を、高校ごとに割り当てている仕組みです。生徒はその枠に校内で応募し、高校の中での選考――主に日々の成績(評定)の積み重ね――で推薦者が決まります。
大事な特徴が二つあります。ひとつは、校内で推薦が決まれば、大学に合格する可能性が非常に高いこと。多くの場合「受かったら必ず入学する」約束(専願)が前提になっている入試だからです。もうひとつは、だからこそ勝負の場が入試本番ではなく「校内」にあること。争うのは全国の受験生ではなく、同じ高校の同級生であり、効いてくるのは一発の試験ではなく、定期試験を何年も積み重ねた評定です。一般受験とは、戦う場所も物差しもまったく違う入試だと考えてください。
高3の1年間は、こう進みます
学校・年度で前後しますが、おおまかな流れは毎年ほぼ同じです。
- 春〜初夏:大学から高校へ、その年の推薦枠と条件が届く
- 夏前後:高校が生徒に枠の一覧を示し、希望を募る
- 9月ごろ:校内選考。ここで推薦者が事実上決まる
- 秋:大学へ正式に出願し、面接や書類審査を受ける
- 冬:大学から正式な合格発表
見てのとおり、事実上の決着は秋の校内選考です。正式な合格は冬まで出ませんが、専願前提のこの入試では、校内選考を通ったあとに不合格になることは多くありません。一般受験の受験生が最終的な出願校を決めるのは冬ですから、指定校推薦の決断は、それより数ヶ月早くやってくることになります。
いちばんの落とし穴――「夏の伸びを見てから決める」ができない
この日程のずれが、実務でいちばん知られていない落とし穴を生みます。
一般受験なら、夏休みに力を伸ばし、夏の終わりの模試でその成果を確かめ、そこから志望校を絞っていけます。ところが夏の終わりの模試は、結果が返ってくるまでに1ヶ月前後かかるのがふつうです。一方、指定校推薦の校内での申し込みは、9月上旬に締め切られる学校が多い。つまり、「夏にどれだけ伸びたか」を確かめてから推薦か一般かを決める、ということが日程上できないのです。
たとえば、いまの実力より一段上の大学を「夏に伸びれば狙えるかもしれない」と考えている生徒に、いま確実に届く水準の推薦枠が来ているとします。夏の成果を見てから選びたいところですが、その結果が出るころには申し込みが締め切られている――この形の決断を、多くの家庭が経験します。
ですから、指定校推薦を選択肢に入れるご家庭は、判断の材料を「夏の結果」ではなく「1学期までの成績と、そこからの伸びの見込み」に置くことになります。準備としてできるのは、高3の夏を待たずに――遅くとも夏休みのうちに――「推薦を使う可能性」を一般受験とは別の軸で考え始めておくこと。そして夏の模試は自己採点をきちんとやり、「この手応えなら推薦・これなら一般」という線を、親子で先に話しておくことです。
「一般受験に自信がないから、推薦で」――この選び方はおすすめしません
面談で、はっきりお伝えしているのがこの点です。指定校推薦の人気の枠に進んでいく生徒は、実際には一般受験でも戦える学力を備えていることが多いものです。推薦は「学力勝負からの避難路」ではなく、日々の定期試験という別の種目で、何年間も戦い続けた結果として手に入るものだからです。
「一般に自信がないから推薦に賭ける」という消極的な選び方をすると、評定の競争でも一般受験でも力が入り切らず、どちらも中途半端になりやすい。逆に言えば、推薦を視野に入れながら一般受験の勉強も並行して進める「二正面」は、部活などの負荷が極端に重くなければ十分成り立ちます。どちらに転んでもよい状態を保つこと自体が、いちばんの安全策です。
評定をめぐる、細かいけれど効いてくる話
勝負の場が校内の評定にある以上、評定まわりの実務も知っておく価値があります。
- 評定の運用は学校ごとに違い、絶対評価に近い運用へ移っている学校もあります。 周囲の出来次第で順位が動く相対評価とちがい、絶対評価なら自分の到達度がそのまま反映されるため、推薦を見据えた成績の見通しが立てやすくなります。お通いの学校がどちらの運用かは、学校の説明で確かめておく価値があります。
- 学年の平均点は、学年が上がるほど上がっていくことがあります。 高校からは推薦を意識して成績を取りにくる生徒が増えるためです。「平均に追いつく」という目標は、年を追うごとにハードルが上がる前提で計画したほうが現実的です。
- 出願年度の評定に効くのは、夏前の試験までという学校が多くあります。 それを踏まえて、夏以降は学校の成績よりも受験に直結する勉強へ時間を振り向ける、という判断をする家庭もあります。
- 枠は、成績だけで守られるものではありません。 生活態度や SNS でのトラブルが理由で推薦が取り消されることがあります。細かいことのようですが、数年分の積み上げが一度に消えるのはここです。
学校のタイプで、「推薦」という言葉の重みが変わる
同じ「指定校推薦」でも、学校によって位置づけはまったく違います。推薦での進学が進路の主軸になっている学校もあれば、指定校推薦をほとんど使わず、一般受験で戦うことに指導の力点を置く校風の学校もあります。また、総合型選抜は相性など本人の力だけでは決まらない要素が大きく、そこだけに絞らずに一般受験と並行して準備する家庭が多いのが実際のところです。
まず知っておきたいのは、わが子の学校で、推薦がどういう位置づけなのかということです。それ次第で、評定をどこまで守るか、いつから受験勉強に軸足を移すかの答えが変わります。お通いの学校の事情は学校別ガイドもあわせてご覧ください。手応えと評定の読み方から一緒に整理したい場合は、学習カウンセリングでお手伝いします。