中高一貫校生のための難関大受験塾

「そのまま」と​答えた​塾生が、​十数分後に​即答するまで

以下の記事は、主任講師の吉江が実際の授業を見学し、また授業動画を見直して、ふだんの授業の一場面を記録したものです。当塾の雰囲気をお伝えできれば幸いです。

高2理系の数学の授業。この日の前半は、極限と微分の小テストの答え合わせだった。

数学講師のY先生が、一人の塾生に聞く。

「どの辺が難しかった?」

塾生が問題番号を挙げると、Y先生は続けて、少し変わった聞き方をした。

「なんか、どの辺が臭いですかね?」

どこが分からないか、ではない。どこに工夫の匂いがするか、という問いである。

塾生は「分かりません」と答えた。

「分かんないのは百も承知で。まだ見えないけど、この辺になんか工夫があるかな、でいいから」

正解を求めているのではない。問題を見たときに、どこがポイントになりそうか。その勘所を探す練習をさせている。

微分の問題に入ると、その塾生がつまずいた。

e の3x乗の微分を聞かれて、

「そのまま」

と答えたのである。e の x 乗と同じように、微分しても形は変わらないと思ったらしい。

Y先生は「それは違うな」とだけ言って、答えを言わずに待った。

すると、少しして塾生の方から声が出た。

「3xの微分?」

「そう。xを3xに変えたんだから、変えたやつの微分、すなわち3倍しなきゃダメね」

間違えたとき、すぐに正解を教えるのではない。本人の口から修正の方向が出るのを待ち、そこに先生が理屈を加える。

次の問題は、二つの式をつなぎ合わせた関数が微分可能になる条件を求めるものだった。

「微分可能の定義は何ですか」

今度は、その塾生は黙ってしまった。

Y先生は別の塾生にも問いかける。それでも定義は最後まで出てこない。

そこで初めて、先生が板書した。

「微分可能の定義はこうですよ」

極限の式を書き、定義に沿って右側と左側の極限を計算していく。

ホワイトボードに向かう先生の後ろ姿。板書は「x=1で微分可能」の定義と、そこから右側・左側の極限を計算していく式

(写真はこの日の授業から)

その途中だった。

「h 分の log(1+h) の、h→0 の極限は?」

さっきの塾生が、今度は即座に答えた。

「1」

「うん、1。じゃあ、logの微分は?」

「x分の1」

「おー、素晴らしい」

「そのまま」と答えてから、まだ十数分しか経っていない。

もちろん、たまたま知っている問題だっただけかもしれない。それでも、この日の授業には一つの一貫した流れがあった。

誤答が出ても、すぐには正解を渡さない。
本人の口から、もう一度言わせる。
定義があいまいなら、定義まで戻る。

答え合わせは、単に丸とバツをつける時間ではない。

どこまでなら自分の言葉で説明できて、どこから先で言葉が止まるのか。

その境目を見つけ、一つずつ越えていく時間でもある。

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