中高一貫校生のための難関大受験塾

テスト前日の数学、質問ひとつから——くじは先に引くか、後に引くか

先日の数学の個別指導でのことです。翌日に学校の定期テストを控えた回で、問題演習がひと区切りついたとき、塾生からひとつ質問が出ました。

「排反事象と、独立な試行の違いが、よく分からなくて」

「いい質問。そこは初心者がいちばん混乱しやすいところです」と先生。

まずは言葉の整理から。排反とは「同時に起こらない」ことです。ひとつのサイコロを振って、1の目と2の目が同時に出ることはありません。これが排反です。一方の独立は「前の結果が、後の結果に影響を与えない」こと。定義を聞くだけなら簡単ですが、つかみにくいのはこの「影響を与える・与えない」の感覚のほうです。そこで先生が取り出したのは、1から6までの数字が書かれた6枚のカードでした。

2人で順番に1枚ずつ引くとします。先生はまず、こう尋ねました。

「1枚目のことはいったん置いておいて——2枚目の人が1のカードを引く確率は、いくつだと思う?」

「6分の1」

「お、いいね。どうしてそう思った?」

「1枚目で1が引かれていなければ、6枚全部あるから……」

「うん。でもそのとき、場に6枚はないよ。1枚目はもう引かれている」

「あ……そうか。もう引かれてる」

答えは合っているのに、理由を言おうとすると揺らぐ。ここが面白いところです。先生は問いを言い換えました。

「じゃあ、このカードで『1を引いたら勝ち』というゲームをするとしよう。先に引くのと後に引くの、どっちが有利?」

塾生はしばらく考え込みます。

「1枚目の人に1を引かれたら、その時点で負けが決まっちゃう。でも、1枚目の人が外れてくれたら、こっちの当たる確率は上がる……」

「で、どっちなんだ? 直感でいいよ。これ、知っているかどうかで人生変わるかもよ。少しでも有利なほうを毎回選べるんだから」

「そうかなあ……じゃあ、2枚目で」

「後のほうが有利、と。美味しいものは後に取っておくタイプだ?」

「はい」

ここで先生が持ち出したのが、宝くじ売り場です。

「宝くじの当たりは、神様の目から見ればもう決まっている。もし『後から買うほうが有利』というのが本当なら、売り場は最終日に大混雑するはずだよね。みんな『どうぞどうぞ』と譲り合って、締め切り間際にわっと買いに来る。——でも、そんな光景は見たことがない。じゃあ先に買うほうが有利なのかというと、それなら初日に長蛇の列ができるはずで、それもあまり聞いたことがないでしょう。実はね、結論は同じなんです。先でも後でも、どっちでもいい」

「運命、変わらないんですね」

「変わらない、変わらない。急いでも急がなくても、くじの運は変わらない。残念ながらね。必勝法があるなら、とっくにみんな知っているはずだから」

最後は計算で確かめます。2枚目の人が1を引く場合を、1枚目の結果で分けて考えます。1枚目の人が1を当ててしまえば、2枚目が1を引く確率はゼロ。1枚目の人が外れる確率は6分の5で、そのとき残りは5枚ですから、そこから1を引く確率は5分の1。掛け合わせると、

6分の5 × 5分の1 = 6分の1。

「ほら、一緒になっちゃうわけ」と先生。

つまり、こういうことです。サイコロは、最初に出た目が次の目に影響を与えない——だから独立。カードは、最初に1を引かれてしまえば、次はもう1が出ない——だから独立ではない。排反は「同時に起こらない」、独立は「前が後に影響しない」。似ているようで、見ている場所がまったく違うのです。

テスト前日のひとつの質問は、宝くじ売り場まで寄り道して、「6分の1」というひとつの数字で決着しました。個別指導のブースでは、ときどきこんな時間が流れています。

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