中高一貫校生のための難関大受験塾
数学の点が上がった日に、減らす相談をする先生
先日、高2の塾生の個別指導を後ろで見学しました。学校の考査の結果を、一教科ずつ確かめていく回です。
この日いちばん明るい話題は数学でした。いつもは平均に届かなかった点数が、今回は平均を5点から10点上回った。「目覚めたんじゃないですか、数学」と先生。
ところが先生が切り出したのは、数学を伸ばす話ではなく、減らす話でした。この塾生は私立文系志望——つまり、数学は受験で使いません。「もう一度確認するけど、数学受験は絶対しない?」と念を押す先生に、塾生は「しない」と答えます。
先生は一週間の勉強時間をたどっていきます。数学10時間、英語10時間、世界史5時間、古文3時間、現代文2時間。受験で使わない数学に、主戦場の英語と同じ時間が使われている。「普通に考えたら、数学の勉強時間を減らすっていう選択肢が浮かぶと思いますが」。ゼロにする話ではありません。それでも塾生は、数学を減らすことに難色を示しました。ここからのやりとりが、この日の見どころです。
「これまでやってきてるから……」
「戦争始めたらやめられないみたいなロジック、やめましょうよ」
先生が、この際、応用問題集をやめることを提案しても、塾生は食い下がります。
「やんないの怖くないですか? 減らして、何に使うんですか?」
「1日を24時間以上に増やすことができないなら、何かを減らす必要がある。各教科の先生の指示を全部守ってたら、絶対破綻するよ。自分で取捨選択しなきゃいけない」
空いた時間の行き先として先生が挙げたのは、本人が前からもっと手をつけたいと言っていた古文と世界史でした。
結局この日、塾生は最後まで数学を手放しませんでした。先生も無理には取り上げません。「客観的に見たら絶対これ数学好きなんだよ。本当に嫌いだったら多分やらないと思うから」
考査の振り返りが、いつのまにか一週間30時間をどう配るかの相談になっていました。点を上げる話より先に、時間を配り直す話。志望が固まりはじめた高2のこの時期、勉強の相談はもうそういう順番で進むのだと思います。