開成中学校・高等学校
「進度表のない学校」を、家庭はどう読めばよいか
開成中学校・高等学校(東京都荒川区西日暮里4-2-4)は、「自由な精神」と「質実剛健」をモットーに掲げる私立の男子校です。JR山手線・京浜東北線・地下鉄千代田線・日暮里・舎人ライナーの「西日暮里駅」から徒歩2分。都心の複数路線が使える立地で、実際、生徒の出身は東京64%に神奈川12%・千葉12%・埼玉9%と、首都圏の広い範囲から通っています。「ペンは剣よりも強し」を図案化した「ペンケン」の校章、初代校長が政治家の高橋是清であることなど、語られる伝統は数多く、創立150周年記念事業として進められた高校新校舎の建設も2024年に完了しました。
一日の枠組みは、3学期制・50分×6時限。登校は8時10分(冬は8時20分)、下校は17時。土曜も通常授業が50分×4時限置かれた週6日制です。この時間の枠だけを見ると「授業の多い進学校」という一般的な像に収まりそうですが、開成の学習を理解するうえで本当に押さえておきたいのは、別の一点です。
それは、この学校が「一律の進度表を持たない」ことです。学校の説明では、中3終了時の授業進度は「教員・生徒により異なる」とされています。各教科でプリントなどの自主教材を活用した質の高い授業を展開し、じっくりと学習に取り組むのが特色——つまり、検定教科書のページ数で進み具合を測る学校ではなく、担当の先生が自分の教材で、自分の設計で6年間を組み立てる学校です。中学では基礎の徹底に努めつつ、主要3教科では高校内容も扱い、最終的には受験レベル以上の高度な学力を完成させる、と学校自身が明言しています。
保護者の方にとってこれが何を意味するか。「開成のカリキュラム表」を横に置いて我が子の現在地を測る、という発想が最初から使えない、ということです。基準にすべきは一般論の進度表ではなく、目の前の授業とプリントそのもの。この一点を軸に、数学・英語・定期テスト・進路設計の順で、家庭側の設計を整理していきます。
開成の数学——5教科で最も厚い17コマを、専門の教師が中1から受け持つ
数学に一番時間を割く学校、という事実から始める
開成の主要5教科の週あたりコマ数は、中1が英5・数5・国6・社4・理5の計25、中2が英5・数6・国5・社4・理4の計24、中3が英5・数6・国4・社4・理5の計24。3年間の合計は英15・数17・国15・社12・理14の計73コマで、公立の課程の計55コマをはっきり上回ります。そして5教科の中で最も厚いのが数学の17コマです。中2・中3で週6コマ——学校が6年間の設計の中で、数学に一番の時間を投じていることが、時間割の数字にそのまま表れています。
もうひとつの特徴が教える側の体制です。開成では数学・理科・社会を、中1の段階から分野別に専門の教師が担当します。中1の数学を「中学の先生」がまとめて教えるのではなく、分野ごとの専門家が受け持つ。この体制と自主教材のプリントが組み合わさるため、授業は担当の先生の設計次第で深くも速くもなります。進度が「教員・生徒により異なる」のは、この構造の自然な帰結です。
家庭側の実務でいちばん大事なのは、市販教材の足し方です。一律の進度表がない以上、書店の標準的な問題集を「学年相当」で選んで並行させると、学校の授業と扱う順番も深さも噛み合わない、ということが起こります。補助教材は「いま授業でやっているプリントの、どの単元をどの深さで補うのか」を確認してから選ぶ——遠回りに見えて、これが開成では最短です。
数学でよくあるつまずき
- プリント教材の管理が崩れ、試験前に「どこから復習するか」の起点が消える
- 授業は理解できているのに、演習で手が動かず、解法の選択理由を言語化できない
- 主要3教科は中学のうちから高校内容も扱うため、基礎の穴が後の単元で増幅される
- レポートや作文など記述の課題と演習が重なり、時間配分が試験前に破綻する
リープエンジンでのサポート(数学)
- 「学校のプリント」を単元別に整理し、「必須・頻出・発展」の優先順位をつけて復習の起点を守る
- 一般的な進度表でなく、担当の先生の授業の実際の進み方に合わせて、週単位の演習・解き直しを設計
- 記述力を重んじる開成の学びに合わせ、途中式・論理の運びを減点されにくい答案の型へ整える
開成の英語——読解・作文・文法・英会話の「すべて」を、家庭で1本のルートにする
4つの柱を並行して回す設計
開成の英語は、読解・作文・文法・英会話のすべてを重視する設計です。英会話は外国人教師が担当し、少人数授業は英語で中1から中3まで実施されます。在校生からも「英会話では外国人の先生とのゲームのような楽しい授業もある」という声があり、「聞く・話す」に楽しく触れる入口が用意されていることがうかがえます。週あたりのコマ数は中1から中3まで一貫して5コマ。数学ほど極端な厚みではありませんが、公立の課程を上回る時間の中で、4つの柱を並行して積み上げていきます。
授業の形が多様な教科ほど、家庭学習は散らかりやすくなります。読解の予習、文法の課題、作文の提出、会話の時間——それぞれをその場限りでこなしていると、「勉強はしているのに語彙と構文が積み上がらない」状態になりがちです。必要なのは、多様な授業を家庭で「1本の復習ルート」にまとめ直すことです。芯に置くべきは本文の読解。本文を正確に読める状態を先に作り、文法・作文・会話をそこへ接続していくのが、開成英語の設計に合った順序です。
英語でよくあるつまずき
- 4本柱それぞれの課題を別々にこなすうち、単語学習が小テスト対応の暗記に寄り、読解の中で「見て意味が出る」語彙が積み上がらない
- 提出物・小テストに追われ、本文の精読(構文・論理)が浅いまま試験を迎える
- 会話の授業が「楽しいだけ」で終わり、語彙・言い換えのストックにつながらない
リープエンジンでのサポート(英語)
- 本文をチャンク(意味のかたまり)で区切り、音読→構文→要約の順で「読める」を「解ける」に変換
- 語彙は本文読解の中で増やす方針に統一——読んだ文章から「見て意味が出る」語を回収し、作文・会話で使う語だけ書ける形まで仕上げる
- 読解・作文・文法・会話の4本を、本文読解を芯にした1本の復習ルートへ整理し直す
開成の定期テストと6年間の学習設計——「じっくり」の学校で、家庭は何を見るか
進度でなく「仕上がり」を見る
開成は3学期制で、授業では創造性や思考力の養成を掲げ、レポートや作文など記述力をきたえる機会も多い学校です。理科では実験・観察を積極的に行い、国語では文法や古文・漢文の系統学習を行う。理科のコマ数も3年間で14と、公立の11に対して厚く取られています。「じっくりと学習に取り組む」という学校の言葉どおり、速さを誇るのではなく、深さで受験レベル以上まで持っていく設計です。
この環境では、定期テスト対策の起点も「範囲表を待って対策を始める」ではなく、「日々のプリントと課題をその週のうちに仕上げる」に置くのが合理的です。進度が先生ごとに異なる以上、頼れる物差しは配られた教材の消化度しかありません。習熟度別の授業は置かれていないため、同じ教室の中に仕上がりの差は自然に生まれます。差を測る場が定期テストであり、差を埋める時間は日常の週の中にしかない、と考えておくのが実際的です。
定期テストに向けた進め方の一例
- 2週間前:配布済みプリント・課題の「1周目」を完了させる(数学=基本〜頻出を先に固定、英語=本文の音読・構文を先に固める)
- 1週間前:間違えた問題だけを集約して2周目。レポート・提出物はこの週までに片づけ、直前期に残さない
- 直前:ミスの型(計算・条件の見落とし/語法・語順)だけを最終確認する
なお、生活面のリズムも軽視できません。食堂はあるものの中学生の利用は土曜日の放課後のみで、平日は弁当持参です。下校は17時、そこから約80ある部・同好会の活動——運動部では130年以上の伝統をほこるボート部をはじめ、全国大会出場の陸上競技部・水泳部・ゲートボール部、都大会優勝のサッカー部、学芸部では全国大会出場の弁論部・クイズ研究部・俳句部など——や、5月の運動会に向けた準備が重なります。運動会は全生徒が一丸となって時間をかけながら準備する、開成で最も盛り上がる行事です。馬上鉢巻取り・綱取り・俵取りの勇壮な競技に全学年リレー。開成祭、筑波大附属高校とのボートレース、荒川河川敷のマラソン大会と、伝統の行事が数多く、しかも運動会や文化祭だけでなく学年旅行やクラブ・委員会活動も生徒主体で行われます。行事に時間を注ぐこと自体が開成の教育の柱です。だからこそ家庭側は「行事の山がいつ来るか」を先に見て、勉強の週次ルートが崩れない設計をしておく価値があります。
開成の進路設計——コース制のない6年間を、どう組み立てるか
これは、開成にお子さんが通われているご家庭に向けた、在学中の進路設計の話です。
「文理で削らない」課程の意味
開成の進路の本線は、一般受験です。そして課程の側に、はっきりした特徴があります。高校ではコース制を採用せず、選択科目で生徒のニーズに対応する、という設計です(高校からの入学生とは高2で合流します)。文系コース・理系コースに分かれて科目を絞り込む学校では、「どちらのコースに乗るか」という選択が課程の側から早めに迫ってきますが、開成にはそれがありません。科目を削る・残すの判断は、選択科目を通じて生徒自身の側に委ねられています。
これは裏を返せば、進路の方向づけを「学校の仕組みが代わりに決めてくれる」ことはない、ということです。志望の軸——国公立か、学部系統はどこか——を家庭と本人の側で持ち、それに合わせて選択科目を組む。コース制のない自由度は、軸のある生徒にとっては科目選択の柔軟さとして効き、軸のないままだと単なる保留になります。中学のうちから急ぐ話ではありませんが、高校での科目選択が「本人の設計」を前提にした仕組みであることは、早めに知っておいてよい前提です。
なお、卒業後の進路について付け加えると、2025年3月の卒業生は396名です。進学先の内訳は誌面ではデータ不明とされているため、ここで数字の話はしません。進路の傾向や実際の数字は年度によっても変わりますので、学校配布資料や説明会で直接ご確認ください。大切なのは実績の多寡ではなく、「うちの子はどの道で勝負するのか」を決める材料として眺めることです。
「今は塾を急がない」という選択も、正直にお伝えします
開成は、受験レベル以上の高度な学力を授業で完成させると掲げ、実戦力をみがくために授業でも演習を数多く行い、模擬テストや長期休業中の講習で進路実現を支援する学校です。つまり、受験に向けた演習と支援の仕組みが、校内にひととおり備わっています。日々のプリントがその週のうちに消化できていて、定期テストごとの仕上がりに大きな谷がないなら、外から枠を足す必要は薄い——これが正直なところです。
むしろ開成で気をつけたいのは、塾を足すときの足し方です。進度が「教員・生徒により異なる」学校に、外部の標準カリキュラムをそのまま重ねると、学校の授業と塾の授業が別々の山を登る形になり、時間だけが割れていきます。塾の出番は、プリントの消化が回らなくなった、特定の教科の谷が深くなった、高校の科目選択を前に志望の軸を整理したい——そんな具体的な必要が生じた時です。その場合も、標準カリキュラムを上から被せるのではなく、目の前の授業と教材を基準に、崩れた部分だけを立て直す形が、この学校には合っています。
開成の6年間を、将来につながる学びに
開成の6年間は、自主教材による質の高い授業でじっくりと学び、行事も部活も生徒主体でやり切る時間です。併設高への進学率は99%。中学から高校へ、同じ設計思想の中で6年間が連続していきます。この環境を活かす鍵は、一般的な進度表ではなく「目の前の授業とプリント」を物差しにした家庭学習の設計にあります。
リープエンジンは、中高一貫校専門の伴走役として、開成の授業設計(数学17コマ・分野別専門教師/英語4本柱/記述重視・コース制のない高校課程)を前提に、「いつ・何を・どの深さまで仕上げるか」をお子さんの実際の授業に合わせて設計します。開成の6年間が、深く考え、自分で組み立て、形にできる時間になるよう、必要なところだけ、外部の力も賢く使っていきましょう。