海城中学高等学校

4年で積み、2年で分ける——海城の6年の区切り方

海城中学高等学校は、東京都新宿区にある男子校です。2011年に高校募集を停止し、いまは中学から入った生徒だけで6年間を過ごします。押さえておきたいのは、この学校が6年を「3年+3年」で区切っていないことです。学校自身が、中1から高1までの4年間を「基礎学力の伸長と充実の時期」と位置づけ、主要教科に標準よりも多くの時間をあてると説明しています。文科系・理科系の2コースに分かれるのは高2から。つまり6年の切り方は「4+2」です。

家庭の側から見ると、この区切りで手触りがはっきり変わります。中3の学年末は節目ではありません。4年のうちの3年目が終わっただけで、翌春もそのまま同じ顔ぶれで、基礎期の授業が続きます。本当の節目は高1の終わり。しかも、そこで分かれるコースは生徒本人の意思が尊重されます。学校が成績で振り分けるのではありません。

時間割の形も、あわせて押さえておきます。3学期制で、登校は8時15分、50分授業を6時限、下校は17時が目安。土曜日も50分×4限の通常授業があります。主要5教科の週あたりの授業時間は、公立中学校の課程より週6〜7コマ多く取られています。学校が時間そのものを厚く確保し、学年全体が基礎期として同じ課程を進みます。だから家庭の側で見ておきたいのは、理解の遅れを早めに見つけて戻せているかどうかです。

海城の数学カリキュラムとつまずきやすいポイント

中3までに、5教科が横並びで高1相当まで進む

数学は中1が週5コマ、中2・中3が週6コマです。中3を終えた時点の進度は、英語・数学・国語・社会・理科の5教科すべてで高1相当。数学だけが突出して先へ行く設計ではなく、主要教科が横並びで約1年ぶん先行します。これが4+2の前半4年の実体です。一教科だけを速く走らせるのではなく、主要教科をまとめて「高校の入口の少し先」まで運び、残り2年を進路別に使います。

学校の言う「標準より多くの時間・密度の濃い授業」を数学で言えば、先を急いで距離を稼ぐのではなく、多い時間×濃い中身で厚みを稼ぐ設計です。少人数や習熟度別の枠はなく学年一斉で同じ密度が続くぶん、濃い授業を週のうちに戻して自分のものにする工程は家庭の側の設計に委ねられています——ここが海城の数学の分担線です。戻す工程が細いと、単元が3つ4つ進んだころには「どこから直せばいいか分からない」状態になります。積み残しに最初に気づけるのは、家庭で見えている解き直しの記録です。

高2で選べる幅は、高1までの数学が決めている

高2からの2コースは、文科系が国語・英語・社会、理科系が数学・英語・理科に重点を置きます。選択は本人の意思が尊重されるので、成績で行き先が決められることはありません。ただし、意思が尊重されるということは、選択肢が二つそろっているところまで保証してくれるわけではありません。理科系を現実の選択肢として残せるかどうかは、基礎期の4年で数学をどこまで運べたかで決まります。理科系を「選べる」状態にしておくことと、理科系を「選ぶ」ことは別です。前者は4年かけて作るもので、高2になってから作るものではありません。

もう一点。文科系を選んでも数学が消えるわけではありません。この学校は、コースごとに重点を置きつつも、国公立大の受験に対応するためすべての教科をかたよりなく学習する設計を掲げています。「文系にしたから数学は終わり」という切り方は、この課程には最初から入っていません。中学のうちに数学を捨てる前提で組むと、高2で選べたはずの道が、選択の時期を待たずに狭くなります。基礎期が4年あるうちの前半を復習の手順そのものを決める期間にあてる手もあり、決めるところまでを相談学習で、決まったあとの高1末までの積み上げを通常授業で、と役割を分けられます。

海城の英語教育と、6年間での伸ばし方

4年間、いちばん時間をかけられる教科

英語は中1から中3まで一貫して週6コマで、主要5教科のなかでも厚く時間が取られています。中1・高1・高3ではネイティブスピーカーによる授業があり、「聞く・話す」力の向上と異文化理解に時間が使われます。置かれている学年を並べると、基礎期の入口(中1)、基礎期の締めくくり(高1)、最終学年(高3)——4+2の節目に重なる配置と読めます。中3の段階では英検の受検が学年全体の習慣になっており、校内の成績とは別の物差しを一度通る機会が、基礎期の途中に置かれています。

文理どちらへ進んでも、英語だけは重点に残る

高2からの2コースをもう一度見てください。文科系は国語・英語・社会、理科系は数学・英語・理科。英語は、どちらを選んでも重点教科として残る唯一の教科です。裏を返せば、高1までの4年間で英語に投じた時間は、高2でどちらへ進んでも無駄になりません。6年の投資先として、いちばん取りこぼしの少ない位置にあります。

ネイティブ授業の3点配置は、家庭学習の順序も教えてくれます。入口の中1に「聞く・話す」が置かれているのは、綴りや文法の正確さより先に、音と意味を結ぶ回路を作る学年だということ。中1では、書けるかどうかの物差しだけで測らず、見た瞬間・聞いた瞬間に意味が出る状態を量で作ります。綴りの練習は、意味の側が固まってからで十分です。折り返しの高1は、基礎期の4年で積んだものを「使う」学年。ここまでに、本文を意味のかたまりで切って骨組みを確かめ、中身を自分の言葉で一言にする三手を、週6コマの宿題の処理に押し流されないよう家庭の側に残しておいてください。出口の高3の仕上げは、この折り返しまでの積み方で決まります。処理が追いつかない時期だけ、アベセ(ABC)で短く補強する組み立ても取れます。

海外研修は、6年の設計の中に置いて考える

希望者向けの海外研修が複数あります。中3の春休みに2週間のアメリカ姉妹校研修(ホームステイあり)、高1・高2の夏休みにイギリスへのミニ留学、高1・高2の3学期に約3か月のカナダ短期留学。ここでも4+2の区切りが効きます。高1の3学期は基礎期の最後の学期で、その直後に高2のコース選択が来るからです。3か月の留学は行けば必ず得るものがありますが、「戻ってきた春に何が待っているか」を先に見ておきたい時期でもあります。実施の形や時期は年度によって変わりますので、詳細は学校配布資料や説明会でご確認ください。

定期テストと、6年間を見通した学習設計

4年間の定期テストは「基礎期の点検」として読む

中1から高1までの定期テストは、進路を決める材料ではなく、基礎期が予定どおり積み上がっているかの点検です。出題範囲があらかじめ分かっている試験で落とすなら、その単元はまだ基礎期の積み上げに載っていない、と読みます。高2からは進路別の2年に入りますから、そこへ持ち込む穴は少ないほど有利です。

学年全体が同じ課程で進むので、校内での位置は、1学年300人を超える学年全体のなかでの位置になります。ただしそれは、主要教科に厚く時間を取った集団の中での相対です。校内で見劣りする教科が全国では十分に通っていることも、その逆も起こります。中3で学年全体が英検を受けるように、外の基準を一度通しておくと、基礎期のどこに手を入れるかを校内の空気と切り離して決められます。

週6日の生活のどこに、家庭学習を置くか

平日は8時15分登校・17時下校が目安で、土曜日も4時限の授業があります。クラブは約30あり、都心では貴重な13,000m²の校庭も使えます。海城祭、体育祭、カルタ会と行事も一年を通して置かれ、中1・中2の校外研修では人間関係を築く力を学ぶPA(プロジェクト・アドベンチャー)に、さらに演劇的手法を用いたドラマ・エデュケーションなどの体験学習にも取り組みます。

体験の柱は、基礎期の4年に厚く重ねられています。海城の長い助走は、教科と体験の両方を載せるために長い——だからどれも、削って勉強に回す対象ではありません。ただ、週6日の授業に部活と行事が乗った状態で、家庭学習の時間が自動的に残ることはありません。先に決めるのは寝る時刻で、家庭学習はそこから逆に割り付けます。あわせて、海城祭や体育祭で潰れる週にどこまで落としてよいかの下限を、先に言葉にしておく。この二つを決めてあれば、行事の季節に習慣ごと消えることはありません。

学年ごとに、守るものを変える

  • 中1:4年ある基礎期の1年目。週6日の授業量に体を合わせながら、途切れた学習習慣を組み直す学年です。最初の定期テストで思うように取れないことは、中高一貫校では一般に珍しくありません。姿勢の問題として叱る前に、勉強量と周回のしかたの問題として切り分けてください。
  • 中2:数学が週6コマになり、扱う量が一段増えます。ここで週内に戻す型を作れるかどうかが、そのまま後半に効きます。
  • 中3:5教科が高1相当まで進む学年ですが、区切りではありません。高校募集がないぶん、顔ぶれも進度もそのまま高1へ続きます。「4年のうちの3年目」として扱うのが、この学校の設計に合った見方です。
  • 高1:基礎期の最終年で、4+2の切れ目にあたります。ここまでに埋められなかった分は、そのまま高2からの2年の前提条件になります。

夏休みには、各学年とも希望制で5教科の講習が用意されています。学期中は体験と並走するぶん、教科側の立て直しはここが使い時です。外から枠を足す前に、まず校内で使える手当てを確認するほうが順序としては先です。それでも運用が戻らないときは、勉強法と生活の組み立てを相談学習で整えたり、試験前に集中する場としてもくもく勉強会を使ったりと、崩れている部分にだけ枠を足す考え方で十分です。

海城の進路設計——在学中の進路の組み立て

これは、海城にお子さんが通われているご家庭に向けた、在学中の進路設計の話です。

進路の出方(学校の進路構造の一般傾向)

海城に、内部進学で上がれる系列の大学はありません。中学から併設高校へはほぼ全員が進みますが、その先は外へ出て一般受験するのが本線です。大学までエスカレーターで上がる道は、そもそも用意されていません。

卒業後の出方にも、この学校らしい形が一つあります。その春に大学へ進む層と、もう一年かけて志望を通す層とに分かれるのです。志望を下げずに時間をかけるという選び方が、この学校の進路の形のなかにはじめから置かれている、ということです。

指定校推薦の枠もあります。ただし枠や条件は年度ごとに変わりますから、いまの扱いは学校の配布資料や面談で確かめてください。位置づけとしては、一般受験を本線に置いたうえでの選択肢の一つです。

そして、ここでもう一度4+2に戻ります。高2からの2年は、学校が「徹底した進路別教育」と説明する2年で、コース選択は生徒の意思が尊重されます。学校が振り分けないということは、選ぶ責任も本人と家庭の側にあるということです。同時に、重点を置きながらも国公立大の受験に対応するため全教科をかたよりなく学習する設計でもあります。選ぶのは重心であって、やめる教科ではない——コースを選ぶことは、科目を捨てることとイコールではありません。

だから、こう設計します

4+2の切れ目、つまり基礎期が終わる高1の3月から、逆に数えます。そこで置きたい状態は一つ——高2で文科系と理科系のどちらも、本人の意思で選べること。成績や苦手で先に消えている道がない、ということです。この一点が決まると、手前の4年に何を割り当てるかも自動的に決まります。

中1から中3は、4年ある基礎期の3年目までを走っている段階です。進路の話をまとめる時期ではありません。この3年間の定期テストは、いまのやり方が週6コマの授業量に対して通用しているかを見る場です。英語と数学に未定着を残さないこと、理科・社会を「暗記でその場をしのぐ教科」にしないこと。この二つで足ります。

4+2の切れ目が翌春に来る高1は、家庭で進路の話を始める学年でもあります。ここで、いまの得意・不得意だけを材料にコースを決めるのは避けてください。重点を置きつつ全教科をかたよりなく学ぶ課程なので、「苦手だから切る」という決め方とは噛み合いません。話題にすべきは、本人が何に時間を使いたいかと、その希望を高2から実行に移すために基礎期の残り1年で何を仕上げておくか、の二つです。高1の3学期にあたるカナダ短期留学も、基礎期の締めくくりと重なりますから、行くかどうかをこの話し合いのなかに一緒に置いてください。

ここで、4+2という設計を前にした率直なところを書いておきます。基礎期が予定どおり回っているなら——授業と家庭の復習が週のうちに閉じていて、英語と数学に埋め残しがないなら——塾はまだ要りません。この学校は主要教科に厚く時間を取り、夏休みには希望制の講習も置いています。回っているところへ外から枠を足しても、伸びしろより時間の圧迫のほうが大きくなります。

外の手を入れるのは、この循環が崩れたときです。週のうちに復習が戻らない、苦手な単元が学期をまたいで持ち越されている、高1の終わりまでに基礎期を締められそうにない——そうした兆しが見えたときに、崩れている部分だけを立て直す形で足せば十分です。リープエンジンにご相談いただいても、コマ数を横並びで増やす提案はしません。どの教科に、どの時期、どんな役割で入るのかを決めてから使うほうが、この学校の4+2という設計には合っています。

海城の6年間を、見通しを持って

海城中学高等学校(東京都新宿区大久保)は、JR新大久保駅から徒歩5分、西早稲田・大久保・高田馬場の各駅からも歩いて通える都心の男子校です。「新しい紳士」を育てることを掲げ、国際社会をリードする人材の育成をめざしてきめ細かい教育を実践する——学校が示す方針は、そのまま4+2という課程の形に表れています。4年かけて主要教科を横並びで積み上げ、残り2年の進路を本人の意思に委ねる。時間をかけて土台を作るからこそ、最後の選択を本人に渡せる設計です。

ご家庭でできるいちばん大事なことは、この区切りを頭に入れて、「高1の終わりに、どの道も選べる状態でいられそうか」を毎年ひとつずつ確かめることです。中3で気を抜かない理由も、文科系志望でも数学を切らない理由も、すべてここから説明がつきます。4+2のどこで手が足りなくなったのか——それがはっきりしたときに、教科と時期を絞ってリープエンジンにご相談ください。

文責:リープエンジン編集部 ・ 最終更新 2026-07-31