栄東中学校・高等学校
中1で分かれ、同じ速さで進む——栄東の6年の形
栄東中学校・高等学校は、埼玉県さいたま市見沼区にある共学校です。JR宇都宮線(東北本線)の東大宮駅西口から歩いて8分、各学年およそ330名が学んでいます。
この学校の形をひとつだけ挙げるなら、区分ができる時期の早さです。学校は中1から東大クラスと難関大クラスを設置しています。東大クラスは東大・国公立大医学部・旧帝大の現役合格を、難関大クラスは難関大の現役合格を、それぞれ目標に掲げるクラスです。そして学校は、難関大クラスは東大クラスと同じカリキュラム・進度で授業を進める、と明記しています。高校では、東大・国公立大医学部に目標をしぼった東大コースと、多様な進路に対応する難関大コースに分かれます。
読み落としたくないのは、後半のほうです。掲げる進路は違っても、学ぶ内容と進む速さは共通。中1で区分ができるというのは、文系・理系に分かれるのが高2という学校と並べれば極端に早いのですが、その区分は進度の差ではない、ということです。さらに、成績によって東大クラスへ移ることもある——学校はそう記しています。中1でついた区分が6年間そのまま動かない、という前提ではありません。クラスやコースの区分は年度によって変わります。現在の内容は学校配布資料や面談でご確認ください。
そこから、家庭にとっての見方がひとつ決まります。クラスの名前を上下として読むより、進度が共通である以上「どこで詰まっているか」を見るほうが実務的だ、ということです。
時間の枠も確認しておきます。3学期制。授業は1コマ50分で1日6時限、朝の登校が8時35分、下校は18時です。土曜日は、第3土曜が家庭学習日、それ以外の週は4時限の授業があります。誌面に例として示されている中学の時間割では、週あたりのコマ数が英語7・数学6・国語5・社会3〜4・理科4。クラスによって時間割が異なる可能性はありますが、英語がどの学年でもいちばん厚く、次に数学が厚い、という配分の傾向は読み取れます。国語はいくらか上乗せがある程度で、社会と理科は3年間の合計で見ると公立中学校の課程とほぼ同じ量です。英語と数学に大きく振った時間の配り方です。
この学校は「知る・探る・究める。栄東のアクティブ・ラーニング」を掲げ、すべての教科にアクティブ・ラーニング(AL)を取り入れています。グループワーク、ディスカッション、プレゼンテーションを通じて、自分で課題を見つけて解決していく学びを授業に入れる、というのが学校の説明です。授業が「聞いて写す」だけではないという前提は、家庭学習の置き方に効いてきます。
栄東の数学カリキュラムとつまずきやすいポイント
速さで分ける仕組みは、置かれていない
数学は、例として示された時間割で週6コマ。英語に次いで厚く時間が取られています。あわせて見ておきたいのが、この学校には少人数制のクラスも習熟度別のクラスも置かれていない、という点です。理由は素直に読めます。クラスそのものが目標別に分かれているからです。
つまり数学でも、進む道筋はクラスによって変わりません。東大クラスでも難関大クラスでも、カリキュラムと進度は共通。授業の側に「この単元だけ速度を落とす」「この子だけ別のメニューにする」という仕掛けは組み込まれていません。速度を落として合わせる場所がないぶん、遅れを見つけて戻す作業は、まるごと家庭学習の側に残ります。
答案は、クラス名ではなく単元の地図として読む
中1のうちから区分があると、家庭の関心はどうしてもクラスの側に向きます。ただ、学ぶ内容が共通である以上、答案から取れる情報の中身も共通です。「グラフを描かずに式だけで処理して間違えた」「証明で仮定と結論を取り違えた」——こうした詰まりは、クラスの区分とは別の軸で起きます。
だから見るべきなのは、点数の上下ではなく、落とした問題が同じ種類でそろっているかどうかです。途中式を省く癖なのか、図を描かずに考え始める癖なのか、そもそもその単元の定義が頭に入っていないのか。この3つは手当ての中身がまったく違い、同じ点数でも次にやることは変わります。どこで詰まっているかの切り分けから一緒にやりたい場合は、アベセ(ABC)の完全1対1でその単元だけを短く扱う、という入り方もあります。
栄東の英語教育と、6年間での伸ばし方
6年でいちばん時間を渡されている教科
英語は、例として示された時間割ではどの学年でも週7コマです。公立中学校の課程では週4コマですから、上乗せの幅が5教科でいちばん大きいのが英語です。7コマのうち、週1時間は英会話が入ります。加えて、中3では学年全員がGTECを受けます。校内の成績とは別の物差しを、学年でそろって一度通る機会が中学のうちに置かれている、ということです。
コマ数が多いということは、新しいものが入ってくる回数も多いということです。入ってくる量が多い教科ほど、テスト前にまとめて処理する方式は効きにくくなります。単語も本文も、その週のうちにもう一度触れ直す短い時間を毎日置いておくほうが、結局は速い。英会話の時間があることも、この向きを後押しします。授業で言えなかったひと言をその日のうちに調べておく。それだけで、覚える作業がテストのためだけのものから離れます。
英数に厚い時間割は、むしろ国語・理科・社会の側に効く
もう一度、時間の配り方に戻ります。英語と数学に大きく寄っているということは、裏返せば、社会と理科は公立中学校の課程とほぼ同じ時間で中学の3年を進む、ということです。
ここから出てくる判断は明快です。英語と数学は、学校が時間で押してくれます。授業と課題に向き合っていれば、量は確保されます。一方で国語・理科・社会は、学校の授業時間が英数ほど厚くないぶん、家庭での時間の配り方が結果に出やすい。「英語と数学だけ外で足す」という発想が自然に出てくる時間割ですが、不足を先に疑うべきなのは、実は英数のほうではないかもしれません。
確かめ方はあります。直近の定期テストの答案を5教科ぶん並べ、落とし方が英数と国理社でどう違うかを見てください。国理社が覚え残しで落ちているなら、家庭の時間を足す先はそちらです。英語のほうは、毎日の短い時間がどうしても作れないまま学期が過ぎるようなら、相談学習で置き場所を決めるところだけを外に出す手もあります。
定期テストと、6年間を見通した学習設計
定期テストは、区分の確認ではなく詰まりの点検
これも、進度が共通であることから出てきます。東大クラスも難関大クラスも同じ範囲を同じ速さで進むので、定期テストは「どちらのクラスにいるか」を確かめる場ではありません。出る範囲が事前にわかっている試験で落とした問題は、その単元がまだ手の内に入っていない、という合図です。それ以上でも以下でもありません。
学年およそ330名のなかでの位置も、全国の物差しと同じものではありません。校内の数字が示すのは、同じ課程を同じ速さで進んだ集団のなかでの立ち位置です。中3で学年全員が受けるGTECのような外部の物差しは、この点で使い道があります。年に一度でも校外の基準に触れておけば、校内の数字だけで安心したり落ち込んだりせずに済みます。
一週間のどこに、家庭学習が入るか
平日は8時35分登校・18時下校。第3土曜をのぞく土曜には4時限の授業があります。部は約25あり、クイズ研究部・水泳部・コーラス部・チアダンス部が全国大会に出場し、吹奏楽部は西関東大会で銀賞を受けています。行事は、文化祭、体育祭、弁論大会、ビブリオバトル、合唱コンクール。中学では給食が実施され、管理栄養士も参加する給食会議で献立が決まります。
そしてこの学校は、通学圏が広い。埼玉県と東京23区から通う生徒が中心ですが、県をまたいで通ってくる生徒も少なくありません。通学に時間がかかる家庭では、平日に自分で使える時間が、時間割の見た目より短くなります。
これは良し悪しの話ではなく、配分の話です。平日に取れる時間が短いなら、平日は英語のように毎日触れる作業に絞り、数学のようにまとまった枠が要る解き直しは土曜の午後や第3土曜に寄せる。同じ学校に通っていても、家庭学習の設計図は家ごとに違ってよい、ということです。
アクティブ・ラーニングの時間と、定着の時間を分けて考える
栄東のALは、看板だけの話ではありません。すべての教科に取り入れたうえで、中3では各班でテーマを決め、探究内容を表現するポスターセッションを行います。校外に出るALも組まれていて、中2では京都を訪れてグループ研究を仕上げます。高2の秋には6泊7日のオーストラリア研修があり、現地校との交流やファームステイ、授業やディスカッションへの参加が入ります。
こうした学びによって自立的な学習態度が身につき、学習内容の確かな定着が期待できる——学校はそう述べています。そこに、家庭の側から見ておきたい点がひとつ重なります。自分で課題を見つけて解決していく学びは、時間を使う学びです。グループでの作業や発表の準備が重なる時期には、覚える・解き直すという作業の置き場所が押し出されやすくなります。
対処は、押し出されないように守ることではなく、年間のカレンダーの側で先に均しておくことです。中2の京都、中3のポスターセッションのように、時期がある程度わかっているものは前もって織り込めます。その2〜3週間は家庭学習の分量を落とす前提にして、前後の週に寄せておく。なお、長期休暇中の講習は、教師の判断により必要に応じて実施される形です。あらかじめ枠が決まっているものとして計画に組み込めません。夏休みや冬休みの計画は、講習がある場合もない場合も回るように立てておくと安全です。
栄東の進路設計——在学中の進路の組み立て
ここから先は、いま栄東に通っているお子さんのご家庭に向けて、在学中に進路をどう組み立てるかを書きます。
進路の出方(学校の進路構造の一般傾向)
この学校の進路の話は、大学名から始めないほうが見通しがよくなります。入口に置きたいのは、中2で取り組む「20年後の履歴書」です。夢や目標を具体的にイメージして、自らの将来につなげる。学校が心の教育・朝学習のひとつとして挙げている取り組みで、在校生からも「中2の時に書いた『20年後の履歴書』によって、将来の夢が明確になりました」という声が紹介されています。
順に並べてみると、この学校の組み立てが見えてきます。中1で目標別のクラス、中2で「20年後の履歴書」、高校で東大コースと難関大コース。目標を先に立てさせてから積み上げていく設計だと読めます。「まず学力を積み、途中で文理を決める」という順に慣れていると逆向きに見えますが、進度が共通である以上、先に立てるものは進度ではなく目標のほうだ、という筋は通っています。
進路の構造そのものは単純です。系列の大学へ内部進学する道はなく、大学は外部を一般受験して決める。それが本線になります。ただ、卒業生の決まり方はひととおりではありません。その春に4年制大学へ進む人が多数を占める一方で、もう一年かけて志望を通す人もまとまっています。志望を下げて年内に決めることだけが標準ではない、と知っておくと、高3の見通しが立てやすくなります。
選択肢としては、指定校推薦もあります。対象となる大学や枠の数は年度によって変わります。現在の内容は学校配布資料や面談でご確認ください。あくまで、一般受験という本線の脇にある道です。
だから、こう設計します
設計の起点に置きたいのは、中3の終わりです。高校でコースが分かれる以上、その手前を「どちらも選べる状態」で迎えられるように中学の3年を使う。それが目標です。
ここで気をつけたいことがひとつ。中1から区分があるぶん、家庭の会話は「クラスをどうするか」に寄りやすくなります。ですが区分は年度ごとに見直されるものですし、そもそもカリキュラムも進度も共通です。会話の中身をクラスの側に置くと、手当てをすべき場所を見失います。話すべきなのは、この単元が止まっている、この教科の週の回し方が崩れている、という具体のほうです。
「20年後の履歴書」は、家庭の側でも使えます。中2で一度書いたきりにせず、年に一度、同じことを言葉にしてみる。中2で書いたものと高1で書いたものが食い違っていても構いません。むしろ、そこに意味があります。目標を先に立てる設計に乗るというのは、立てた目標を定期的に置き直す作業とセットだからです。高校でコースが分かれるときも、その延長で話ができれば、区分そのものの話だけで終わらずに済みます。
ここは正直に書きます。授業と家庭での復習が週のうちに一巡していて、英語にも数学にも持ち越しがないのなら、いまの段階で塾を足す理由はありません。英数に厚い時間割そのものが、すでに大きな手当てになっています。回っているものの上に枠を重ねれば、得られるものより、削られる時間のほうが大きくなります。
外の力を使うのは、回らなくなったときです。単元の詰まりが学期をまたいで残っている、平日に英語へ触れる時間が消えている、ALや行事の時期に崩れた習慣が翌月になっても戻らない。どれかが表に出てきたら、崩れている一点にだけ手を入れる。それで足ります。そのときリープエンジンが最初に決めるのも、足す量ではありません。入る教科と時期、そして何のために入るのか。この順で決めるほうが、目標を先に立てて積んでいくこの学校の組み立てとはかみ合います。
栄東の6年間を、見通しを持って
栄東中学校・高等学校(埼玉県さいたま市見沼区砂町)は、JR宇都宮線の東大宮駅西口から徒歩8分。2016年に新校舎が完成し、講堂、図書館、柔道場、剣道場、そして瑞龍庵という茶室を備えています。学校が掲げるのは「知る・探る・究める」。すべての教科にアクティブ・ラーニングを入れ、自分で課題を見つけて解決していく学びに時間を割く方針は、中1から目標を掲げたクラスを置く形と地続きです。先に目標を持たせ、そこから学び方を作らせる、という順序になっています。
家庭の側の仕事は、多くありません。年に一度、教科ごとに「いまどこで詰まっているか」をひとつずつ確かめる。クラスやコースの区分ではなく、単元と回し方の側で確かめる。カリキュラムも進度も共通の学校である以上、そこがいちばん確かな手がかりになります。その見きわめを家庭だけで背負うのが重くなってきたら、どの教科をいつ、という枠を決めてからリープエンジンにご相談ください。