浅野中学校・高等学校

早く畳んで、絞り込む——浅野の6年の組み立て方

浅野中学校・高等学校は、神奈川県横浜市神奈川区にある男子校です。中学から入った生徒は、ほぼ全員がそのまま併設の高等学校へ進みます。高校受験で6年が分断されない前提で、カリキュラムが組まれています。

押さえておきたいのは、この学校が6年をどう使うと宣言しているかです。学校自身が掲げているのは「学力の早期完成」。教科ごとに精選したカリキュラムを組み、中3から高校の内容を取り入れた授業に入る、と説明しています。そこから高1で英数の選抜クラス、高2で文系・理系、高3で志望別のコースへと段階的に分かれます。つまり浅野の6年は「早く畳んで、段階的に絞り込む」形です。前半で主要教科を畳み切り、空いた時間を後半の志望別の訓練に充てる。この一本から、数学も英語も、定期テストも進路も説明がつきます。

次に、一日と一週間がどう埋まっているかを見ます。3学期制、登校8時35分、50分授業を6時限、下校18時(冬期17時30分)が目安。土曜日も50分×4時限の通常授業があります。主要5教科の週あたりのコマ数は公立中学校の課程より各学年で週8コマ多く、とくに英語は全学年で週7コマ。「量が多いぶん、家でゆっくり追いつけばよい」という余白は、思ったより小さい学校です。

浅野の数学カリキュラムとつまずきやすいポイント

演習に時間を割いて、中2までに中学内容を畳む

数学は中1が週5コマ、中2・中3が週6コマです。学校の説明では、この時間を演習に割いて、中2までに中学内容のほとんどを終えます。中3からは高校の内容。中3を終えた時点の進度は、英語・数学・国語・社会・理科の5教科すべてで高1相当になります。

ここで大事なのは、前に出る方法が「演習量」だという点です。説明を先へ延ばすのではなく、解く量で押していく。授業で扱う問題数が多いぶん、理解が追いついていなくても手は動いてしまいます。中高一貫校では一般に、演習量で進む教科ほど「解いた量」と「できるようになった量」がずれます。ずれたまま単元が3つ4つ進むと、どこから直せばいいか本人にも分からなくなります。

だから家庭で見ておきたいのは、こなした冊数やページ数ではなく、解き直しの記録です。一度間違えた問題を、日を置いてもう一度解いたか。そこで解けたか。この2点だけ追えば、演習量が定着量になっているか判定できます。

高1の英数クラスと少人数制——選抜は目標ではなく、積み上げの結果

高1では、英語と数学の成績によって選抜した英数クラスが置かれ、数学には少人数制の授業が導入されます。習熟度で速度を分けるのは、6年でこの位置だけです。

この仕組みは、目標として扱うと歪みます。選抜に入ること自体が目的になると、高1の一時点の成績を上げる勉強に寄り、その先の文理選択と志望別コースから目が離れます。高1の英数クラスは、中1から中3までに数学をどう畳んできたかが表に出る場所で、手前で決まる部分が大きい。ただし高1からでも、止まっている単元を特定してそこだけ戻せば立て直せます。

もう一点。高1で速度が分かれるということは、その前の3年間は学年全体が同じ速度で進むということでもあります。学年一斉で演習量を積む3年間に、自分の弱点だけを狙って戻す仕組みは授業の側になく、そこは家庭学習が担います。畳み切りの期限が中2に置かれている以上、解き直しが回らない状態を長く放置はできませんので、回し方の設計だけを相談学習で早く済ませ、そのあとに必要な演習量は通常授業で確保する、という入り方が現実的です。

浅野の英語教育と、6年間での伸ばし方

毎時間の小テストで積む——数学とは逆向きの前倒し

英語は全学年で週7コマ。公立の課程が週4コマですから、主要5教科のなかで最も厚く時間が取られています。学校の説明では、文法構造の理解を目標に中1から毎時間小テストを実施し、中2でほぼ中学内容を終了します。「総合」として各学年に1時間の英会話が置かれ、こちらは中1から中3まで少人数のクラスです。

ここが数学との大きな違いです。数学は演習量でまとめて前に出る型、英語は毎時間の小さな確認を積んで前に出る型。同じ「中2までに中学内容を畳む」でも、作り方が違います。

家庭の関わり方も、そのぶん変わります。数学は、週末に2時間の枠を取って解き直せば、ある程度は取り返せます。英語の小テストは取り返せません。毎時間あるということは、落とした回をその日のうちに埋めないと、次の授業でもう次の範囲が乗るということです。まとめてやり直す発想が効きにくい。だから英語には、まとまった枠ではなく、毎日15分の帯を割り当ててください。小テストが毎時間ある以上、この帯は長さで補うものではなく、日数で守るものです。

小テストを「綴りゲーム」にしない

毎時間の小テストには落とし穴もあります。学校が目標に置くのは文法構造の理解ですが、生徒の側は目先の点を取りにいくので、綴りを覚える作業に寄りがちです。中高一貫校では一般に、綴りを優先しすぎると、かえって長文が読めるようになりません。

順序を決めておきます。まず、英語を見た瞬間に日本語の意味が出る状態を、量を回して作る。小テストで問われる綴りは、その意味が出るようになった単語から順に埋めていけば足ります。そのうえで本文は、かたまりごとに切って読み、文の骨組みを確かめ、何の話かを一言でまとめる。小テストの点だけを追うとこの三手が真っ先に抜け落ちるので、家庭の側に残してください。中3から高校英語に入るこの学校では、この三手の有無が、後半の読解量への耐性を決めます。小テストに追われて本文の処理まで手が回らない時期には、その足りない分だけをアベセ(ABC)で短く補うこともできます。

希望者向けの海外研修も置かれています。夏休みに中3〜高2対象のイギリス・オックスフォード大学での約2週間のリベラルアーツプログラム、中3・高1の3月に約1週間のシンガポール研修。実施の形や時期は年度によって変わりますので、詳細は学校配布資料でご確認ください。

定期テストと、6年間を見通した学習設計

定期テストは「早期完成」の点検として読む

中3を終えた時点で、5教科すべてが高1相当。浅野の前半は、公立の課程より約1年ぶん先に進んだ状態で畳まれます。この設計のもとでは、定期テストは順位を競う場ではなく、畳んだはずの範囲に穴が残っていないかの点検になります。範囲が示されている試験で落とした単元は、畳んだつもりで畳めていなかった単元です。

早く畳む学校では、この穴が普通より早く効いてきます。中3からは高校内容が乗り、高1では英数の速度が分かれ、高2では文理に分かれる。穴を抱えたまま次の段に上がる回数が、他より多いのです。

ただし、1学年250名を超える規模での校内順位が、そのまま全国の物差しになるわけでもありません。校内でやや苦手でも全国では十分に上位ということはありますし、逆もまた同じ。早く畳む集団の中での相対を実力そのものと取り違えないよう、全国の物差しに置き直す機会を、どこかで挟んでください。

下校18時・土曜授業・部活加入率ほぼ100%——時間をどう配るか

クラブ・同好会は30以上あり、中学の部活加入率は100%近い。ボクシング部やアーチェリー部から全国大会に出場するディベート部まで幅は広く、行事も林間学校、スキー教室、秋の奈良・京都を訪れる中3研修旅行、中高別の体育祭、文化祭「打越祭」と一年を通して置かれています。学校生活のすべての時間を人間形成の場と考え、部活動を奨励する——それが学校の方針です。

学校が部活も行事も人間形成の場と位置づけている以上、そこを削って勉強に振り替えるという発想は、この学校では取りにくい。ただ、平日は18時下校、土曜も4時限の授業、そのうえほぼ全員が部活。この三つが乗った一日から、家庭学習の時間が勝手に浮いてくることはありません。起点は就寝時刻に置きます。そこから家庭学習を割り付け、打越祭や研修旅行で潰れる週の「最低ライン」を先に決めておく。行事の季節に帯ごと消えるのを止めるのは、この順序です。

その最低ラインの中身は、数学と英語で分けてください。英語は毎日15分の帯を切らさないこと。数学は週のどこかに、まとまった解き直しの枠を1本確保すること。忙しい週に真っ先に消えるのは英語の帯ですが、あとで取り返しにくいのも英語の帯です。

学年ごとに、守るものを変える

  • 中1:中2の畳み切りまで、残り2年しかない学年。毎時間ある英語の小テストに合わせて毎日の帯を先に作ってしまうのが、いちばん早い立ち上げ方です。
  • 中2:数学が中学内容を畳み、英語もほぼ終える学年。6年でいちばん密度が上がるところで、ここに残した穴が中3からの高校内容の下に埋まってしまいます。
  • 中3:高校内容に入り、5教科すべてが高1相当まで到達する学年。研修旅行もあり、行事と進度が同時に重い年です。中学内容はすでに中2で畳んでありますから、総仕上げの学年ではなく、高校の学習が始まって1年目の学年として扱ってください。
  • 高1:英数の選抜クラスと数学の少人数制が始まり、翌春には文理選択が控えます。畳み残しがあるなら、絞り込みが本格化する前のこの1年が、最後に取り返せる場所です。

長期休暇中の講習も、各学年に指名制・希望制の両方が用意されています。校外に枠を探すより先に、この指名・希望の講習をどう使うかを決めるほうが早道です。

浅野の進路設計——在学中の進路の組み立て

これは、浅野にお子さんが通われているご家庭に向けた、在学中の進路設計の話です。

進路の出方(学校の進路構造の一般傾向)

浅野に、内部進学で上がれる系列の大学はありません。中学から併設の高等学校へはほぼ全員が進み、そこから先は外へ出て一般受験で決めるのが本線です。

出口の数字にも、構造としての傾向が出ます。卒業生は、その春に4年制大学へ進む層と、もう一年かけて志望を通す層とに分かれます。時間をかけてでも志望を下げないという道が、この学校の進路の形にはじめから用意されている、ということです。

指定校推薦の枠もあります。ただし対象や条件は年度によって変わりますので、現在の枠は学校配布資料や面談でご確認ください。

この学校の進路設計でいちばん重要なのが、高3の志望別コース分けです。理系は①東大、②難関国公立、③国公立、文系は①東大、②国公立、③私立。ここで独自の教材を用い、志望別に学力を強化する、と学校は説明しています。

並び方をよく見てください。理系は3つとも国公立に向いた区分で、私立専願のコースは置かれていません。文系ではじめて③に私立が来る。学校が高3の1年をどこに向けて設計しているかが、この並びに表れています。そして志望別に分かれる以上、高3が始まる時点で「どの志望で走るか」がもう決まっている必要がある、ということです。

だから、こう設計します

絞り込みの最後の段が高3ですから、逆算の起点は高2の3月です。置きたいのは、そこで並ぶ志望別コースのどれに乗るかを、本人が納得して決められる状態。高2の頭には文理の分岐がありますから、高2の1年は文理を決めたあと志望をもう1段細かく決める年、その手前の高1は英数の選抜クラスと少人数制が始まり、文理の話を始める年です。

中1から中3の3年間に、進路を決める仕事は割り当てません。この期間の役割は一つ、早期完成を予定どおり済ませることです。数学は演習の解き直しを週内に戻すこと、英語は小テストの帯を切らさないこと。理科は実験中心、社会は中高の内容を一体化させた課程ですから、その場で覚えて流さず、後半で使える形にしておくこと。

高1で文理を話すときは、「得意・不得意」だけで決めないでください。理系の3コースが国公立に向けて並ぶ以上、理系なら数学・理科に加えて国語・社会も落とさない前提です。文系でも②国公立が真ん中に置かれています。数学を早い段階で切ると、高3で選べるのは③に絞られる、という関係です。話すべきなのは、高2の終わりまでにどこを埋めればその志望を選べるのか、です。

そのうえで、早期完成という設計を踏まえて、はっきりお伝えしておきます。前半で畳み、後半を志望別に使う——この順序が崩れずに回っていて、英語と数学に持ち越しがないのなら、いま外から塾を足す理由はありません。学校は主要教科に公立の課程より週8コマ多く時間を取り、長期休暇には指名制・希望制の講習も置いています。18時下校・土曜授業・ほぼ全員が部活という条件下で外から枠を足せば、伸びしろより時間の圧迫のほうが大きくなります。

手を入れるとすれば、畳む作業が予定どおり進まなくなったときです。演習の解き直しが週内に戻らない、英語の帯が2週間以上切れている、中2までに畳んだはずの範囲を中3以降で引きずっている。そうした兆しが見えたら、崩れている部分だけを立て直せば十分です。一律にコマを積み増す提案は要りません。早く畳んで後半を志望別に使う設計に乗るには、どの教科に、どの時期、どんな役割で入るかを先に決めるほうが効きます。

浅野の6年間を、見通しを持って

浅野中学校・高等学校(神奈川県横浜市神奈川区子安台)は、JR京浜東北線「新子安駅」・京浜急行線「京急新子安駅」から徒歩8分。京浜工業地帯やベイブリッジを見下ろす高台にあり、校舎を囲む自然林「銅像山」は県の愛護林鳥獣保護区です。校門から校舎へ続く坂は「打越坂」、9月の文化祭も「打越祭」。

学校が掲げているのは、「九転十起」が表す強さ・逞しさと、「愛と和」が表す優しさ・思いやり。その土台の上に確かな学力と豊かな知識を載せる、という順序です。早く畳むのも、速さを誇るためではなく、畳んだぶんの時間を後半の志望別の訓練に回すためです。

ご家庭でできるいちばん大事なことは、この設計を頭に入れて「畳み残しがないか」を毎年ひとつずつ確かめることです。中2で英数に穴を残さない理由も、中3を「高校の1年目」として扱う理由も、すべてここから説明がつきます。畳み残しがご家庭の手に負えなくなったとき、どの教科をいつ立て直すかを決めるところからリープエンジンがお手伝いします。

文責:リープエンジン編集部 ・ 最終更新 2026-07-25