田園調布学園中等部・高等部

理系を選ぶことが、特別ではない——田園調布学園の6年の形

田園調布学園中等部・高等部は、東京都世田谷区東玉川にある女子校です。東急東横線・東急目黒線の田園調布駅から徒歩8分、東急池上線の雪が谷大塚駅からは10分。はじめに一点だけ。同じ「田園調布」を名前に持つ田園調布雙葉中学高等学校とは、別の学校です。以下はすべて、東玉川にある田園調布学園の話です。

この学校の手触りを一文にすると、理科と数学を好きにさせる仕掛けが具体的に置かれた女子校、となります。理科は6年間でおよそ150種類の実験を扱い、中1・中2では毎週取り組む。数学は長期休業中の課題に「関数グラフアート」を出し、関数への理解を深めながら苦手意識を取り除く。学校はこの二つを紹介の冒頭に置き、生徒の半数近くが理系を選ぶ女子校だ、とも名乗っています。

この名乗りは、家庭にとって具体的な意味を持ちます。この学校では「なんとなく文系へ」という流れが弱い。理系を選ぶことが特別ではないのです。裏を返せば、中学のうちに数学や理科を切る判断をすると、学校が用意した幅のほうが先に狭まります。

進路の側にも形があります。卒業生のほとんどは、卒業したその年のうちに4年制大学へ進学します。もう一年かけて志望を通す層は、ごくわずかです。現役で決めきる形が定着しています。

この二つを重ねると、6年の形が見えます。理系に進む道を残したまま、現役で間に合わせる。締め切りが実質的に高2末に置かれた設計です。以下、数学・英語・定期テスト・進路を、この構造から見ていきます。

田園調布学園の数学カリキュラムとつまずきやすいポイント

中2で、人数を絞ることと速度を分けることが同時に始まる

数学は中1・中2・中3とも週5コマ、3年間で15コマ。公立中学校の課程(3年で11コマ)より4コマぶん厚く取られています。

ただ、先に見ておきたいのはコマ数よりも編成です。数学は中2から高3まで少人数制、そして同じ中2から高3まで習熟度別。人数を絞ることと速度を分けることが、同じ学年で同時に始まります。中1は学年一斉で進み、中2の春に少人数と習熟度別が一度に入る——これが数学の入り口です。遅れを見つけて速度を合わせる仕組みが、入学から日を置かず授業の側にある形です。

これは安心材料であると同時に、家庭に見方をひとつ求める形でもあります。編成が変わるとは、中1の手ごたえが中2からの環境に反映されるということだからです。「上か下か」で読むと値踏みになる。見るべきは、いまの速度で単元が身についているかどうかです。なお、習熟度別の編成は年度によって変わります。現在の運用は学校配布資料や面談でご確認ください。

「関数グラフアート」は、締め切り前にまとめて片づく課題ではない

もうひとつの特徴が、長期休業中の課題として出される「関数グラフアート」です。式を選び、描かれる線を確かめ、思ったとおりの形になるまで直す。手を動かす時間が要る課題で、最後の数日でページ数を消化して終わらせる進め方が通りません。長期休みの計画は、この課題の時間を先に取り、残りに解き直しを割り当てると崩れにくくなります。

しかも長期休暇中の講習は、中学は指名制(高校は希望制)で、呼ばれるかどうかが事前にはわかりません。中学の長期休みは、講習が入っても入らなくても回る形で先に組む必要があります。中2で編成が変わったあと、どの単元がどう噛み合っていないかを外の目で切り分けてほしい場面なら、期間を区切ってアベセ(ABC)を使う手当ても取れます。

田園調布学園の英語教育と、6年間での伸ばし方

少人数は中1から、速度を分けるのは中3から——数学とは入り方が逆

英語は各学年とも週6コマ、中1から中3までで合計18コマ。主要5教科でいちばん厚い配当です(公立中学校の課程は3年で12コマ)。うち1時間が英会話にあてられます。

英語は、数学と順番が入れ替わっています。少人数制は中1から高3まで、習熟度別が入るのは中3から高3。まず中1から人数を絞った環境を用意し、速度を分けるのは二年おいて中3から。教科の性質から読める配置です。数学はひとつの単元でつまずくとその先へ進めないので、詰まった段階で速度を分ける意味がある。英語は最初の二年で全員に量を積ませるほうが後で効くので、分けるより先に人数を絞り、発話と添削の回数を増やす。学校自身、多読やディスカッションの機会を多く設けると述べています。

知っておきたいのは、中1・中2の二年間が「速度で救ってもらえる期間ではない」ということです。この二年で積んだ量の差が、中3の編成に表れます。とはいえ、やることは複雑ではありません。英会話で出てこなかった表現をその日のうちに引く。本文を意味のかたまりごとに区切って読み直す。この作業を切らさないかどうかが、二年ぶんの差になります。毎日の置き場所を決めるところだけ外に出したい段階なら、相談学習で回し方を作れば足ります。

中3の英検と、留学の時期をどこに置くか

中3になると、英検を受けることが学年の当たり前になります。校内の順位とは別の尺度に、中学のうちに一度そろって当たる機会がある、ということです。年間計画の締め切りに使えます。

海外へ出る機会も置かれています。中3の夏休みには希望者対象の約2週間の語学研修があり、行き先はカナダのバンクーバーかオーストラリアのケアンズ。高1・高2では、ニュージーランドへの3か月の短期留学があります。

後者は、進路の形と合わせて考える価値があります。現役で決めきる学校では、高2末が実質的な締め切りになる。3か月の留学は、その手前でまとまった時間を別の使い方へ振り向ける選択です。行く価値がないという話ではなく、行くなら、戻った学期に何が控えているかを先に確かめてから決める、という順序の話です。実施の時期は年度ごとに動きます。

定期テストと、6年間を見通した学習設計

3学期制の試験は、範囲が区切られているうちに点検として使う

3学期制です。区切りが多いぶん、一回あたりの試験範囲は広がりにくい。あらかじめ範囲が示された試験で取りこぼしが出るなら、その単元はまだ自分のものになっていません。進路を決める材料ではなく、点検として読みます。校内の順位も、同じ入口を通ってきた集団での位置にすぎません。真ん中より下にいることと、大学受験の母集団で下にいることは別です。中3の英検は、外の物差しを一度通す機会になります。

コマ数の側から一点。理科は3年間で11コマ、社会は10コマで、数学や英語と違い、公立中学校の課程とほぼ同量です。毎週実験を行う学校でこの配分なら、授業時間の相当部分が実験に向いていることになります。断定はできませんが、そうだとすると、覚えて解けるようにする作業の置き場所は家庭側で決めることになります。

8時25分に始まり18時に下がる一日、土曜は年8回だけ形が変わる

平日は1コマ50分の授業が6時限で、7時限の日もあります。8時25分に登校して、下校の目安は18時。土曜は各土曜とも休みですが、年8回だけ「土曜プログラム」が入ります。

ここが、時間の設計でいちばん実務的な論点です。土曜が空いているぶん、まとまった時間の要る作業——数学の解き直しや、範囲の広い教科の総点検——は自然と土曜に置くことになります。ところが年に8回、その土曜が埋まる。土曜に頼りきった週の設計は、年8回まるごと崩れます。年度のはじめに日程をカレンダーへ落とし、その週だけ平日へ寄せておけば済みます。

通学の事情も重なります。この学校では神奈川県から通う生徒が半数を超えます。乗車時間が長い家庭では、下校後に残る時間が時間割の見た目より短い。効くのは、机に向かっている時間だけを家庭学習と数えない切り替えです。移動中でも成立する作業を先に決めておくと、平日の帳尻が合います。

部・同好会は約30あり、中高合同。行事はなでしこ祭、体育祭、横浜みなとみらいホールでの定期音楽会。宿泊行事は中等部の全学年にあり、中3は関西・台湾・韓国から行き先を選びます。上級生と下級生が同じ部で動くので、部の予定は学年暦と一致しません。両方を並べておくと、忙しい時期が読めます。

週1コマの「探究」は、中1から高2まで時間割のなかにある

中1から高2まで、週に1コマ「探究」の時間があります。外部団体とも連携して課題解決学習に取り組む授業で、探究発表会も置かれています。あわせて、数学と地理、倫理と美術といった組み合わせで教科を横断する授業もあります。あらゆる場面で「体験」を重視するのが方針で、礼法の授業や「自分史」の作成もその一部です。

見ておきたいのは、探究が行事ではなく、教育課程に固定された枠だという点です。行事なら、その週だけ家庭学習を薄くして前後で埋め合わせれば足ります。週1コマの授業はそうではありません。5年間、毎週その時間が確定して入り、発表会の前には準備も乗ります。点数に直接は表れにくい時間が確実に消える——そこを前提に週の設計を組みます。逆に言えば、高3にこの枠はありません。5年で体験と探究に時間を使い、最後の一年を教科に寄せる。現役で決めきる進路の形と揃っています。

田園調布学園の進路設計——在学中の進路の組み立て

ここからは、田園調布学園に在学中のご家庭に向けた話です。まず学校の進路がどう出るかを見て、そのうえで家庭の設計を決めます。

進路の出方(学校の進路構造の一般傾向)

この学校には、系列の大学へ内部進学する仕組みがありません。中等部からはほとんどの生徒が併設の高等部へ上がり、その先の大学は外へ出て一般受験で決める。それが本線です。

構造としていちばん目を引くのは、決まる時期です。学年のほとんどが、卒業した年のうちに4年制大学へ入ります。もう一年かける層はごくわずかで、現役で決まる形がこの学校の進路の基本になっています。

もうひとつが、理系の厚さです。生徒の半数近くが理系を選ぶ、と学校自身が名乗っています。ここまでの比率になるのは、150種類の実験や「関数グラフアート」といった仕掛けが教育課程の側に具体的に置かれているからだと読めます。大事なのは帰結です。この学校では、理系を選ぶことが例外的な選択ではありません。

指定校推薦も、この学校の進路のなかにあります。どの大学から何枠来るかは年度ごとに動くので、いまの枠は学校配布資料や面談で確かめてください。主戦場はあくまで一般受験で、こちらは条件が合ったときの別ルートです。

進路につながる仕掛けとして、土曜プログラムも挙げておきます。年8回、語学・総合文化・科学分野など5分野、約170の講座から自分で選ぶ形で、学年ごとの推奨講座もあります。学校の案内に載る在校生の声でも、進路を考えるときに役に立つ、と触れられています。講座の編成は年度によって変わるので、その年の内容は学校からの案内でご確認ください。注目したいのは中身よりも、「選ぶ」動作を年8回くり返す仕組みという点です。

だから、こう設計します

起点に据えるのは、高2の終わりです。目標はひとつ——その時点で、理系も文系も選べる状態でいること。ここまでの二つを重ねると、設計はここに収束します。

ひとつ目は、中学のうちに数学と理科を切らないことです。理系を選ぶ生徒が半数近くいる環境では、「数学が苦手だから文系で」という決め方が、周囲の流れに乗った選択には見えません。それでもそう判断するなら、本人の中だけで完結した決定になります。しかも学校は、実験を毎週入れ、長期休みには関数を手で描かせるところまで用意している。中1・中2で苦手感が出たときに「うちは文系だから」で片づけない。それだけのことです。

二つ目は、遅れを学期をまたいで持ち越さないことです。当たり前に聞こえますが、意味の重さが違います。もう一年かける選択が進路の形にほとんど入っていない以上、後ろに余白がないからです。中3の穴を高1で埋め、高1の穴を高2で埋める——その順送りが締め切りに間に合いません。幸い、数学は中2から、英語は中3から、速度を分ける仕組みが授業の側にあります。先に使うのはそちらです。

三つ目は、土曜プログラムを進路の会話に使うことです。家庭の側でやるのは、講座の評価ではありません。「なぜそれを選んだのか」を、年に一度、本人の言葉にさせることです。探究の授業も自分史の作成もあり、材料は十分にあります。何に時間を使いたいかを本人が言えていれば、高2の選択が「苦手で消した結果」ではなく「選んだ結果」になります。

正直なところを書いておきます。学校の授業と家の復習が一週間のなかで噛み合い、数学と英語に未処理の単元が残っていないなら、いま塾を増やす必要はありません。数学は中2から少人数かつ習熟度別、英語は中1から少人数。手当ては授業の側にもう組み込まれています。回っている上に枠を重ねれば、増えるのは負荷です。

外を使うのは、この回転が止まってからで間に合います。前の学期の詰まりが片づかないまま次に入っている。長期休みの計画が、関数グラフアートと解き直しの取り合いで毎回破れる。土曜プログラムの週に途切れた習慣が、次の週にも戻らない。そうした形が見えたら、止まっている一か所だけ手当てします。そこでリープエンジンに期待していただきたいのも、時間数ではありません。締め切りが高2末にある設計では、枠を増やすより、残り時間の使い先を絞るほうが効きます。

田園調布学園の6年間を、見通しを持って

田園調布学園中等部・高等部(東京都世田谷区東玉川)は、2026年に創立100周年を迎えます。掲げているのは「豊かな人生を歩める人になるために。」という言葉です。

これを課程の側から言い直すと、こうなります。理科と数学を好きになる仕掛けを具体的に置き、探究と体験に週1コマを確保し、そのうえで現役で決めきる。理系に進む可能性を残したまま、高2末に間に合わせる——それがこの学校の形です。

ご家庭に必要な作業は、そう多くありません。年に一度、「いま、理系も文系も選べる位置にいるか」を数学と理科の手ごたえで確かめること。そして、土曜プログラムで何を選んだのかを本人に語らせること。この二つが続いていれば、高2の選択は本人のものになります。この確かめが家庭だけでは難しくなったら、対象の教科と時期をはっきりさせたうえでリープエンジンにお声がけください。

文責:リープエンジン編集部 ・ 最終更新 2026-07-25