豊島岡女子学園中学校・高等学校

全校で、そろえて積む——豊島岡の6年の作り方

豊島岡女子学園中学校・高等学校は、東京都豊島区にある女子校です。中学から入った生徒は、ほぼ全員がそのまま併設の高等学校へ進みます。

この学校の手触りは、朝のはじまりに出ています。登校は8時10分。その5分後、8時15分の合図とともに、全校いっせいに5分間の「運針」が行われます。学校はこれを、心静かに集中力を養う時間として、伝統に位置づけています。学年も学級も関係なく、全員が同じ時刻に同じ5分を積む。一日はここから始まります。

「そろえて」は朝だけではありません。部活は約50あり、全員参加。学習面でも、習熟度別で速度を分けるのは英語が高2・高3、数学は高3のみで、中学の3年間と高1は学年一斉で進みます。少人数の編成も、中1〜中3の英会話、高2・高3の社会、高3の理科に限られます。

つまり、朝の5分から部活まで全員が同じことをそろえて毎日積む作りで、学習面でも学年一斉で進む期間が長い。ここから含意が出ます。全員が同じ進度で進む以上、自分の穴は自分で見つけて埋めるしかない。少なくとも高1までは、習熟度別で速度を分ける形は取られていません。

「そろえて」は、時間割の数字にも出ています。3学期制、50分授業を6時限、下校は17時20分(冬期は17時)。土曜も50分×4時限の通常授業。主要5教科の週あたりのコマ数は公立中学校の課程より各学年で6〜7コマ多く、学校自身も「主要5教科に重点をおき、中でも英語と数学に多くの時間を割く」と説明しています。

豊島岡の数学カリキュラムとつまずきやすいポイント

中3を終えた時点で、5教科が横並びで高1相当

数学は中1・中2が週5コマ、中3が週6コマ。中3が終わる時点で、英語・数学・国語・社会・理科の5教科がそろって高1相当まで来ます。学校は「中3の後半までには高校内容の先取り学習を始める」と説明しています。数学だけが突出するのではなく、主要教科が横並びで約1年ぶん先行する形です。

数学で速度が分かれるのは、高3の1年だけ

ここが、この学校の数学でいちばん大事な点です。数学に習熟度別が入るのは高3のみで、中1から高2までの5年間、数学は学年一斉で進みます。つまり、授業の速度と自分の理解の速度が一致する保証がない。速い子には物足りず、遅れた子は待ってもらえない。調整は授業の外側で行うことになります。

学年一斉で進む授業は、クラスとして進める判断で次の単元へ移ります。本人が分かっていなくても止まりません。中高一貫校では一般に、遅れをその週のうちに戻す仕掛けを持っていないと、単元が3つ4つ先へ行ったころには、どこへ戻ればいいのかが本人にも見えなくなります。だから家庭で見るのは、その週に習ったことを、その週のうちに自分ひとりで解き直せたかどうかです。テストを待たずに、授業の速度に乗れているかが分かります。

置き方は、この学校の生活がヒントになります。毎朝5分の運針が示すのは、短くても毎日切らさずに置けば形になる、という時間の使い方です。解き直しも、週末に2時間まとめるより、平日の短い枠を毎日置くほうがこのリズムには乗ります。自分の穴を自分で見つける作業を一人で抱えきれないなら、どこが止まっているかの切り分けを相談学習で他人の目に通し、その先の積み上げを通常授業で回す、という分け方もできます。

高2の文理は「選ぶ」より先に「選べる」を作る

高2から文系と理系に分かれます。ただ、どちらを選ぶかより先に決まってしまうのは、どちらを選べるかのほうです。理系の課程に乗れるだけの数学が手元にあるかどうかは、学年一斉で進む4年のあいだに、自分で穴を見つけて埋めてきたかで決まります。

ここに、数学の習熟度別が高3にしかない事実を重ねてください。高2で文理に分かれたあとも、数学は1年間、コースの中で同じ課程を進みます。高2に持ち込んだ穴を授業の側で個別に拾ってもらう場面は想定しにくい。穴を清算する期限は、実質的に高1の終わりです。

豊島岡の英語教育と、6年間での伸ばし方

中学3年間でいちばん厚い教科——中2は週7コマ

英語は中1が週6コマ、中2が週7コマ、中3が週6コマ。公立中学校の課程は週4コマですから、主要5教科で最も厚く時間が取られています。各学年とも、このうち1時間は英会話です。

週6〜7コマということは、英語で新しい内容が入る日が週にほぼ毎日ある、ということです。ここでも運針と同じ形が効きます。週末に長い枠を1本ではなく、毎日15分の帯を用意してください。運針が5分で成立しているのと同じで、家庭の帯も長さではなく、毎日置けるかどうかで決まります。

英会話は少人数——ScienceやMathを英語で扱う

中1からの週1時間の英会話は少人数制で、1クラスを2つに分けて行われます。内容は日常会話にとどまらず、ScienceやMathに関する表現も学び、プレゼンテーションをします。

学校メッセージには、スーパーサイエンスハイスクールに高校が指定されたことで、学校全体として探究学習に力を入れている、とあります。重ねて読むと、英会話の位置づけが見えてきます。日常会話の練習であると同時に、調べたこと・考えたことを英語で伝える場としても置かれている、と読めます。英語学習の集大成として英語弁論大会も置かれ、クラス代表が暗唱とスピーチを行います。

中3で、校内とは別の物差しを一度通る

英検は受検が奨励されており、中3の時点で2級以上に届く層が学年の半数を超えます。学年一斉で進む期間が長い学校では、これは意味のある機会です。校内の空気だけで位置を測っていると、進度が全体に速いぶん、上振れにも下振れにも気づきにくい。

中身の作り方は、コマ数が多いぶん注意が要ります。中高一貫校では一般に、コマ数が多い教科ほど目先の小テストに寄りやすく、そのぶん読む力のほうが伸び残ります。先にほしいのは、見た瞬間に意味が出る語の数です。書けるようにするのは、そのあとで足ります。本文は、意味のかたまりで切りながら読み、文の骨組みを確かめ、内容を一言に縮める。週7コマの処理に押し流されやすいのはこの部分なので、家庭の帯のなかに置いておいてください。一斉の進度に語彙が追いつかなくなった時期にだけ、遅れている部分をアベセ(ABC)で短く足す使い方ができます。

希望者向けの海外研修も複数あります。中2・中3の英語圏への約2週間の研修、中3〜高2のインドスタディツアー、高1・高2のボストン研修、約3か月のニュージーランド留学。実施の形は年度で変わりますので、学校配布資料でご確認ください。

定期テストと、6年間を見通した学習設計

定期テストは、一斉の進度に対する自分の点検表

中1から高1までは学年一斉で進みます。定期テストは、その進度についていけているかを測る、いちばん確実な定点です。一斉に進む列のどこで自分が止まったかは、範囲の決まった試験で落とした単元にそのまま出ます。

校内での位置は、1学年270名規模の学年全体のなかでの位置です。全員が同じ課程を同じ速度で進む以上、そこに出る上下は「同じ進み方をした270人の中での上下」でしかありません。列の中ほどの教科が全国ではよく通っていることも、列の前のほうの教科が全国では平凡だということもあります。奨励されている英検のような外部の試験が、その置き直しに使える目盛りです。

登校8時10分・土曜授業・部活は全員参加——時間をどこから出すか

部活は約50あり、全員参加です。合唱コンクールの全国大会常連であるコーラス部から、剣道部、登山部、阿波踊りの桃李連まで幅は広い。行事も、入間総合グラウンドでの運動会、文化祭の桃李祭、中1の小諸での林間学校、中2の東北への宿泊研修、中3の京都・奈良と、一年を通して置かれています。

部活が全員参加である以上、そこを削って勉強に回すという選択肢はそもそもありません。行事も同じです。平日は8時10分登校・17時20分下校、土曜も4時限の授業、そのうえ部活。放っておいて家庭学習の枠が生まれることはありません。決め方は運針にならいます。寝る時刻を先に固定し、残った時間に家庭学習を割り付ける。桃李祭や運動会で潰れる週には、そこまでなら落としてよいという下限も先に決めておく。そうしておけば、行事の季節でも帯そのものは残ります。粒度は英語15分・数学の解き直し15分で十分です。朝の5分が校内で成立している学校ですから、家庭の側も短くて毎日消えないものに。

学年ごとに、守るものを変える

  • 中1:受験のあとで途切れた学習の習慣を、週6日の授業と全員参加の部活が乗った生活のなかに置き直す学年。まずは家庭学習の帯を一本立てるところからで十分です。
  • 中2:英語が週7コマになる学年。中学3年間でいちばん英語の密度が高いところなので、ここで帯を切らさないことが後半に効きます。
  • 中3:5教科が高1相当まで進み、後半には高校内容の先取りが始まる学年。宿泊研修もあり、行事と進度が同時に重くなります。中学のまとめをする学年と見ると実態に合わず、高1の前倒しが始まった年として構えるほうが合います。
  • 高1:学年一斉で進む最後の年で、翌春には文理に分かれます。ここに残った穴は、誰かが拾ってくれるのを待たずに、そのまま文理の2年へ付いていきます。

長期休暇中の講習は、中3から高3まで希望制で用意されています。校外の枠を探すより先に、この希望制の講習をどう使うかを決めてください。

豊島岡の進路設計——在学中の進路の組み立て

これは、豊島岡にお子さんが通われているご家庭に向けた、在学中の進路設計の話です。

進路の出方(学校の進路構造の一般傾向)

豊島岡にも系列の大学はありません。中学から高等学校へはほぼ全員が上がりますが、大学へ内部進学する仕組みは置かれておらず、外部を一般受験するのが本線です。学校自身も、4年制大学への進学を目標として中高6年間のカリキュラムを編成している、と説明しています。

進路の出方にも、この学校の作りが表れます。卒業生は、その春に4年制大学へ進む層と、もう一年かけて志望を通す層とに分かれます。多くが現役で決める一方、時間をかけてでも志望を下げないという道も、この学校の進路の形にはじめから置かれています。

後半2年の作りも見ておきます。学校は、高2から文系と理系に分かれ、英語で習熟度別授業を取り入れて基礎学力の充実と応用力の伸長をはかる、高3では演習中心の授業で実戦力をみがく、と説明しています。高2からは放課後の実力養成講座、長期休暇には夏期・冬期講習や直前講習も置かれます。

並べ直すと、速度が分かれるのは進路が決まりはじめた後です。英語の習熟度別は高2から、数学は高3から。それ以前の4年間は、全員が同じ課程を同じ速度で進みます。なお、コース分けや講座の編成は年度によって変わります。現在の内容は学校配布資料や面談でご確認ください。

だから、こう設計します

数学の習熟度別が高3まで来ない以上、穴を清算できる最後の場所は高1の3月です。だから、そこを起点に逆から数えます。置きたいのは、高2の文理選択の場面で、本人が「どちらへでも行ける」と言える状態。この状態から逆算すると、そろえて進む4年に何を積んでおくかが見えてきます。

中1から中3は、学年一斉で進む4年のうちの3年目までです。進路を絞る作業は、ここには置きません。定期テストのたびに確かめるのは点数の上下ではなく、自分で穴を見つけて埋める作業が回っているかどうかです。英語の帯を切らさないこと、数学の解き直しを週内に戻すこと、理科・社会を「その場で覚えて流す教科」にしないこと。これで足ります。

全員が同じ課程を進む最後の1年が高1ですから、文理の相談はこの年のうちに始めます。そろって進んできた4年の成績の上下だけで決めるのは、材料として足りません。本人がどこに関心を持っているかを聞き、その方向へ進むために自力で埋めておくべき単元を、残る1年の分量に落とします。約3か月のニュージーランド留学を考えているなら、抜けているあいだも列は同じ速度で進むので、時期と戻ったあとの埋め方まで一緒に決めます。

ここからは、そろえて進む学校だからこそ言えることを、遠慮なく書きます。そろえて進む列に無理なく乗れていて、週のうちに復習が回り、英語と数学に止まった単元がないのなら、いま塾を探す必要はありません。この学校は主要5教科に公立の課程より週6〜7コマ多く時間を取り、講習や実力養成講座も置いています。全員分の時間がすでに学校側で埋まっている状態にさらに枠を重ねると、伸びる余地より先に体力が削られます。

塾を考えるのは、そろえて進む列から一人だけ落ちかけたときです。解き直しが週のうちに戻らない、英語の帯が2週間以上切れている、止まった単元が学期をまたいでいる——そうした兆しが見えたときに、崩れている部分だけを立て直せば十分です。リープエンジンでも、まず増やすという入り方はしません。全員が同じ速度で進む期間が長い学校では、枠を増やすことより「どの教科の、どこが、いつから止まっているのか」を先に特定するほうが効きます。

豊島岡の6年間を、見通しを持って

豊島岡女子学園中学校・高等学校(東京都豊島区東池袋)は、「池袋駅」東口から徒歩7分、有楽町線「東池袋駅」から徒歩2分。中高とも利用できる食堂「ポッポ」があり、制服はスラックスも選べます。

学校のメッセージには、人はだれでも必ず一つは独特な才能を持っていて、それを発見し伸ばすのが学校教育では大切だ、とあります。そのうえで、努力を続ける習慣と集中して物事に取り組む態度を土台に、大いに才能を伸ばしてほしい——と。土台が「習慣」と「集中する態度」であることに注目してください。毎朝5分の運針も、全員参加の部活も、学年一斉で進む4年間も、この順序で読むと一続きに見えます。まず全員でそろえて土台を作り、その上に一人ひとりの才能を載せる。

ご家庭でできるいちばん大事なことは、この順序を頭に入れて「そろえて進む4年のあいだに、自分の穴を自分で見つけられているか」を毎年ひとつずつ確かめることです。中2で英語の帯を切らさない理由も、高1の終わりを期限として意識する理由も、すべてここから説明がつきます。自分の穴を自分で見つける作業が家庭だけで回らなくなったら、止まっている教科と時期を特定するところからリープエンジンをお使いください。

文責:リープエンジン編集部 ・ 最終更新 2026-07-25