青チャート

青チャートを​お使いの​方​へ

この文章は、『チャート式 基礎からの数学』(数研出版)——いわゆる青チャートを、学校から配られたり課題として指定されたりしている中高一貫校の生徒さんと保護者様に向けて、その使い方についてまとめたものです。書店で自分用に買った方、これから買おうか迷っている方についても、後半でふれます。

チャート式は難易度別に白・黄・青・赤の4色があり、青はその中で、教科書レベルから大学入試レベルまでを一冊でカバーする、収録範囲のもっとも広いシリーズです。中高一貫校では、数学の進度が高校範囲に入る中3〜高1ごろに配られることが多く、以後、定期テストの課題範囲としてつき合うことになる生徒さんが大半だと思います。なお、この幅広さは長所であると同時に、本記事の主題である「量」の問題のもとでもあります。たとえば数I+A の巻だけで、例題・練習・章末問題をあわせて1,000題を超えます。全部を漫然と解こうとする本ではない、ということを、まずおさえてください。

青チャートは​いつ役に​立つのか

先に、LE の結論を書いてしまいます。

青チャートがいちばん役に立つのは、定期テストのたびに、試験範囲を2〜3周してきた場合です。範囲ごとに手を入れてきた青チャートは、書き込みやチェックの跡もふくめて、受験期に「自分専用の解法辞典」になります。入試問題の演習中にわからない問題に出会ったとき、似た型の例題をすぐに引けて、しかも「これは高1の期末で解いた」という記憶ごと引ける。この状態の青チャートは、市販のどんな参考書より頼りになります。実は青チャート自身も、巻頭の使い方のページで「わからない問題が出たときに、似た例題を探して解法を調べる」という辞典的な使い方を紹介しています。積み重ねた一冊は、まさにこの使い方に応えてくれます。

逆に言うと、買ったまま置いてあった青チャート、ぎりぎり1周したかどうかの青チャートを、高2になってから急に受験対策として持ち出すのは、得策ではありません。まっさらな1,000題の山は、辞典ではなくただの山です。高2の限られた時間でこれを崩しにかかるより、優先すべきことがあります。なぜそう考えるのかを、次で説明します。

「青チャートを​回す」​勉強法は​どこから​来たのか

「青チャートを何周も繰り返して、典型問題の解法をぜんぶ頭に入れる」という勉強法を、聞いたことがある方は多いと思います。この方法は1990年代のはじめに受験勉強法の本を通じて広まったもので、当時なりの合理性がありました。とくに地方では、入試の情報も、良い指導にふれる機会も、いまよりずっと少なかった。手に入る網羅的な一冊をやり抜くことが、独学の受験生にとってもっとも確実な道だった時代です。

しかし、いまは違います。解説動画も検索も AI もあり、わからない一問の解法を知ること自体のコストは、ほとんどゼロになりました。それでも「網羅系を回す」勉強法が魅力的に見えるのは、やることが明快で、進んだ量が目に見えるからです。ただ、その明快さの代金として、自分がすでに解ける問題の再演にも同じ時間を払うことになります。1,000題の中で本当にその生徒が向き合うべき問題は一部で、それがどれかは生徒ごとに違う——ここの見きわめこそが、現在ではいちばん価値のある部分です。

ですから、都心の中高一貫校に通っていて、良い塾に通える環境にある生徒さんに、私は「高2から青チャートを回す」勉強法をおすすめしません。これは塾の立場からのポジショントークにも聞こえると思いますが、それを承知で書きます。回す時間で買えるものより、見きわめてもらう時間で買えるもののほうが、いまは大きいのです。

定期テストごとに、​範囲を​2〜3周する

では、配られた青チャートとどうつき合うのがよいか。私の答えはシンプルで、受験対策の本としてではなく、定期テストの本として使うことです。

青チャートの紙面は、例題を軸に組まれています。例題には解き方の方針を示す欄が付き、そのすぐ下に類題の「練習」が1問、節の終わりに章末問題がまとまっている構成です。例題には難易度のマーク(5段階)が付いていて、下の段階は教科書の例・例題レベル、上の段階は入試の標準レベル以上に対応します。定期テスト期にやるべきことは、この仕組みを使って試験範囲だけを絞って往復することです。

  • 1周目は、範囲内の基本例題を、方針の欄をかくして自力で解きます。解けなかった問題に印をつけ、方針を読んでから解き直します。
  • 2周目は、印のついた例題と、その下の「練習」を解きます。学校の指定課題がある場合はここに組み込みます。
  • 余裕があれば3周目に、印が消えない問題だけをもう一度。難易度マークの高い例題や章末問題は、学校の出題傾向に応じて足し引きします。

一回の試験範囲なら、これは現実的な分量です。そして、この「範囲ごとの2〜3周」を中3や高1から積んでいくと、高3になったとき、印と書き込みだらけの一冊が手元に残ります。前に書いた「自分専用の解法辞典」とは、この状態のことです。受験勉強はそこから、志望校に向けた演習を主軸に組み立てればよく、わからない問題が出たら辞典を引く。青チャートがいちばん輝く使い方だと、私は考えています。

なお、学校の進度が速い場合——高1で数IIに入るような進度の学校では、この積み重ねはそのまま先行貯金になります。数学が崩れたときにどこまで戻るかの判断もふくめ、範囲ごとに決着をつけてきたかどうかが、高2以降の伸びを大きく左右します。

学校指定ではなく、​自分で​選んで​使う​場合

学校からの指定がなく、自分用の一冊として青チャートを検討している場合も、考え方は同じです。「これから網羅系を1周する」計画は、時間の見積もりが甘くなりがちで、途中で止まった網羅系はどの使い方にも合いません。定期テストや学校の進度に沿って範囲ごとに使っていけるなら、良い買い物になります。受験期の総復習だけを目的に今から買うなら、一度立ち止まって、いまの学習状況に本当に合うかを確かめることをおすすめします。どの色・どのレベルの本が合うかは、現状によってまったく変わるからです。

塾を​活用した​青チャートの​勉強法

ここまでの話をまとめると、青チャートで大事なのは「回す」ことではなく、範囲を絞ること・自分が向き合うべき問題を見きわめること・範囲ごとに決着をつけることの3つです。そして正直に言えば、この3つはどれも、生徒がひとりで行なうにはむずかしい判断をふくみます。どの例題を飛ばしてよいか、印が消えない問題の原因が計算力なのか概念の理解なのか、崩れたときにどの範囲まで戻るべきか——ここは指導者の目が入ると、かかる時間が大きく変わるところです。

LE は東京の中高一貫校の生徒さんを専門にした塾として、通っている学校の進度と試験に合わせて、この見きわめの部分を日常的に行なっています。授業で範囲ごとの理解に決着をつけ、試験前には青チャートをふくむ課題を計画に組み込み、受験期には積み上がった一冊を辞典として使いこなす。時間を成果に変える最短の道は、良い指導者にその見きわめを任せることだと、私は考えています。青チャートとのつき合い方に迷われている方は、お問い合わせからご相談ください。いまの学習状況をうかがったうえで、お子様に合った進め方をご提案します。

文責:リープエンジン編集部