筑波大学附属駒場中学校・高等学校

速さではなく、深さで——筑波大学附属駒場の6年の作り方

筑波大学附属駒場中学校・高等学校は、東京都世田谷区にある男子校です。同じ世田谷区の駒場東邦中学校・高等学校とも、文京区にある共学の筑波大学附属中学校とも別の学校です。

はじめに、校名の「附属」について一つ。学校が掲げているのは、筑波大学附属駒場高校と一体となって、筑波大学における生徒の教育に関する研究に協力し、その計画に従って学生の教育実習の実施にあたることを目的の一つとする、という位置づけです。ここでの「附属」は、大学の教育研究に協力し、教育実習を受け入れるための附属を指します。そのうえで掲げられているのが、「挑戦し、創造し、貢献する生き方」をめざす自由な学校であること。近年は国際的に活躍できるリーダーの育成をめざし、国際教育の充実にも力を注いでいます。

そして、この学校のカリキュラムには、多くの中高一貫校と違う一点があります。先取りをしません。 学校自身が、英語・数学では先取り学習は行わず、基礎事項・重要事項の深化と徹底に努める、と説明しています。中3を終えた時点の進度は「各教科とも中3課程終了まで」。主要5科の週あたりのコマ数も、中1が19コマ、中2・中3が20コマで、公立中学校の課程(18・18・19コマ)との差は週1〜2コマです。少人数制のクラスも、習熟度別のクラスも、長期休暇中の講習も置かれていません。

在校生のメッセージにも、授業は先生独自のプリントを中心に進められ、進度が速いわけではなく深度に魅力がある、とあります。時間を積み増して前に出るのではなく、同じ時間で深く掘る。

登校から下校までの流れも、確認しておきます。3学期制、登校8時20分、50分授業を6時限、下校17時(18時まで延長可)。土曜日は原則として隔週の登校日で、50分×4時限です。

ここから、家庭の側に一つの帰結が出ます。学校は深さを作る。だとすれば、大学受験に必要な「速さ」と「量」は外側で別に設計することになり、それをいつ、どの教科から始めるかを決めるのがご家庭の役割です。

筑波大学附属駒場の数学カリキュラムとつまずきやすいポイント

進度は学年相当。だから「いつ先へ出るか」を家庭が決める

数学は中1から中3まで週4コマです。公立中学校の課程は中1が4コマ、中2が3コマ、中3が4コマですから、時間の量はほぼ同じ。学校は先取りをせず、基礎事項・重要事項の深化と徹底に努める、と明言しています。

中高一貫校では一般に、主要教科の時間を公立より厚く取り、中3を終える時点で高1相当まで運んでおく設計が多く見られます。この学校はその形を取っていません。学校が選んだ方針であって、遅れているのではありません。ただ、授業を追っていれば高校範囲へ自動的に手が届く——という前提は、この課程には組み込まれていない。そこは把握しておく必要があります。

だから、判断が家庭に回ってきます。深い授業を追い切ることに集中する時期をどこまで取るのか。先へ進む勉強をどの学年から始めるのか。時間割の側からは決まらない二つです。

「深い」授業は、進度が学年相当なぶん楽、ではない

進度が学年相当だからといって、授業が易しいわけではありません。深化と徹底に時間を使う授業は、同じ単元でも問い方が一段深くなります。プリントなどの自主教材を中心に進むので、市販の教科書や問題集の並びとそのまま対応するとも限りません。

つまり、「進んだページ数」ではこの学校の数学は測れません。見るべきは、授業で扱った問題を日を置いて自分ひとりで解き直せるか、なぜその解き方になるのかを自分の言葉で言えるか。少人数制も習熟度別もなく学年一斉で進みますから、理解の速度の調整は授業の外側で行うことになります。

学校の授業に手ごたえを持って乗れているなら、外から足すべきは同じ深さの上塗りではなく先へ出る速さのほうで、リープエンジンでも通常授業の中身を組む前に、いま各単元がどこまで仕上がっているかを確かめるところから始めます。

筑波大学附属駒場の英語教育と、6年間での伸ばし方

週4コマのうち、1時間は英会話

英語は中1から中3まで週4コマで、公立中学校の課程と同じコマ数です。しかも各学年とも、このうち1時間は英会話。学校は、特に英語では「聞く」「話す」力を重視し、外国人教師とのチームティーチングやLL教室での応用的学習を導入する、と説明しています。

英語でも先取りは行われません。深化と徹底という方針は、数学と共通です。数字を並べ直せば、読み書きと文法にあてられる授業は週3コマ相当。中高一貫校では一般に、英語は触れた総量がそのまま力になる教科で、語彙と読む量は時間に比例します。学校が「聞く」「話す」に時間を割く設計を取っている以上、語彙と読解の量は家庭側で意識して積むものになります。

音から入る訓練は、量を積む側にも効く

ただし、これを「学校の英語は先の受験に向かない」と読むのは正確ではありません。外国人教師とのやりとりやLL教室での学習で音から入る訓練は、語彙の定着にも読む速度にも効きます。音で入った語を、読んで意味が出る語に載せ替える——その工程が、週3コマ相当という引き算のぶん、家庭側に残るというだけのことです。見た瞬間に意味の出る語をどれだけ持っているかが先で、書けるかどうかは後から追いつきます。

そのうえで本文は、かたまりで切って読み、骨組みを確かめ、中身を自分の言葉で短く言い直すところまでを一組にしてください。学校が深く扱ってくれるぶん、読む量そのものは自分で積むことになります。その量の帯が一人では立たない時期にだけ、アベセ(ABC)で語彙と本文の処理を短く回す組み立ても取れます。

定期テストと、6年間を見通した学習設計

定期テストは、範囲の広さでなく問いの深さで読む

先取りをしない学校の定期テストは、範囲そのものが学年相当です。だから範囲の広さに追われる形にはなりにくく、そのかわり、深化と徹底に時間を使った授業の中身がそのまま問われます。範囲の決まった試験での取りこぼしは、その単元がまだ「使える知識」になっていない証拠です。

校内での位置には、気をつけたい点があります。各学年は約120名。規模が小さいぶん、順位は少しの得点差で動きます。そのうえ、校内で上位にいることと、大学受験に必要な進度に届いていることは別の話です。校内順位は、深く扱われた内容をどれだけ自分のものにできたかの点検表として読むのが正確です。

長期休暇中の講習は置かれていません。裏を返せば、まとまった時間が家庭の設計に丸ごと残るということでもあります。夏と冬をどう使うかを、学年が上がるごとに決め直してください。

隔週の土曜、多い行事、7割の部活加入——時間は誰が配るか

土曜日は原則として隔週の登校日ですが、そこで行われるのは通常授業ではなく、総合学習や行事の準備です。総合的な学習では、選択制のテーマ学習などを通じて発展的な内容を学ぶ、と学校は説明しています。

行事もかなり多い学校です。初夏の音楽祭、秋の文化祭・体育祭、芸術鑑賞会、弁論大会、ロードレース、筑波大学訪問。とくに文化祭は3日間の開催で、生徒主体で運営されます。部活・同好会は約25あり、中高あわせて7割程度が加入。全員参加ではありません。以前の学生服に制帽という標準服も、学校と生徒の話しあいで廃止され、服装は自由になりました。

並べてみると、構造が見えます。服装も、部活に入るかどうかも、隔週の土曜に何を深めるかも、決めるのは本人の側です。時間配分も同じで、土曜が通常授業で埋まらないぶん、家庭が設計できる時間は構造として多く、そのぶん自動的には埋まりません。まず寝る時刻を固定し、そこから残りを割り振る。そして、3日間の文化祭の準備のように時間が丸ごと持っていかれる週には、どこまでなら落としてよいかを先に決めておく。自分で決める学校ですから、この二つも本人と一緒に決めるのが筋に合います。

学年ごとに、守るものを変える

  • 中1:中学受験のあとで途切れた学習習慣を戻す時期。進度が学年相当なので、入学直後は「思ったより余裕がある」と見えることがあります。その余裕を何に使うかが最初の分岐です。「ケルネル田んぼ」での水田学習——6月の田植えと10月の稲刈り——もこの学年です。
  • 中2:主要5科が週20コマになる学年。増えるのは国語と理科で、数学・英語は変わりません。深く扱われた分をその週のうちに戻す型を、ここで作れるかが後半に効きます。
  • 中3:進度としては中3課程を終える学年。中高一貫校では一般に高校内容へ入っていることが多い学年ですから、「学年相当」という設計の意味がいちばんはっきり出ます。外に速さを足すのか、深さを追い切ることに集中するのか。家庭が方針を決める最初の本番です。
  • 高校の3年間:高2まではほぼ共通科目、高3で多様な選択科目から希望進路に応じて選びます。水田学習は高1にも置かれ、中学の入口と高校の入口の両方に体験が配置されている形です。

筑波大学附属駒場の進路設計——在学中の進路の組み立て

これは、筑波大学附属駒場にお子さんが通われているご家庭に向けた、在学中の進路設計の話です。

進路の出方(学校の進路構造の一般傾向)

はじめに触れたとおり、この学校の「附属」は、筑波大学の教育研究への協力と教育実習の受け入れを指す位置づけです。進路は、外部の大学を一般受験するのが本線になります。卒業生の多くはその春に4年制大学へ進み、もう一年かけて志望を通す層も一定数います。深さで6年を作る学校らしく、ここでも時間のかけ方が本人に委ねられている、ということです。志望の傾向としては、例年、理系学部を志望する層が厚くなります。

そして、進路設計でいちばん重要なのが高校の課程の組み方です。学校の説明はこうです。高2まではほぼ共通科目を履修する。高3では多様な選択科目が設定されるので、希望進路に応じた科目を選び、進学に備える——。

つまり、高2の終わりまで文系・理系でコースが分かれません。高2から文理に分ける形を取る学校が多いなかで、この学校は分岐を高3の科目選択まで持っていく設計です。

含意は二つあります。一つは、選べる幅が長く保たれること。高2までは全教科を持ったまま進むので、「文系にしたから数学は終わり」という切り方が課程の側から入ってきません。もう一つは、そのぶん、どの教科も落とせないこと。文理で科目を削る局面がない以上、高2までは5教科すべてを抱えたまま走ります。高3の選択が本当に「選択」として機能するのは、高2までの共通科目に穴が残っていない場合だけです。

なお、高3で設定される選択科目や講座の編成は年度によって変わります。現在の内容は学校配布資料や面談でご確認ください。

だから、こう設計します

分岐が高3にある以上、逆算の起点も高2の3月まで下がります。置きたいのは、高3で並ぶ選択科目を、本人が消去法ではなく希望で選べる状態です。分岐が最後にあるということは、それまでの5年間は、どの道も開けたまま進む5年間だということです。

ここに、もう一本の時間軸が重なります。学校が先取りをしない以上、受験に必要な速さと量は外側で作ることになる。問いは「作るかどうか」ではなく「いつ始めるか」で、課程の側からは自動的に決まりません。材料は二つ。学校の授業に本人が手ごたえを持って乗れているか。そして、いま本人の時間が何に向かっているか。行事の運営や部活、テーマ学習に本気で時間を使っている時期は、それ自体がこの6年の中身です。そこを削ってから外の勉強を足す順序は、取らないでください。

深さで作る6年について、塾の側から本音を一つ。学校の授業に乗れていて、英語と数学に未定着が残っていないなら、今は塾を急ぐ必要はありません。深化と徹底に6年をかけるこの学校の授業は、それ自体が受験の土台としてかなり強い。速さを外から足すのは、その土台が固まってきてからでも遅くはありません。

塾の出番は二つの局面です。一つは、学校の深い授業に本人が乗り切れなくなったとき。プリント中心の授業は市販教材と対応しにくいぶん、止まった場所を自分で特定するのが難しく、ここは外から見たほうが早い。もう一つは、高2までの共通科目に穴を残したまま高3の選択に入りそうなとき。リープエンジンでも、学校が意図して深さで作っている6年に外から同じ深さを上塗りする提案はしません。足すとすれば、どの教科の、どの単元から先へ出るのか。その一点を決めてからです。

筑波大学附属駒場の6年間を、見通しを持って

筑波大学附属駒場中学校・高等学校(東京都世田谷区池尻)は、京王井の頭線「駒場東大前駅」西口から徒歩7分、東急田園都市線「池尻大橋駅」北口から徒歩15分。各学年は約120名。難関校としては際立って小さな学年規模の男子校です。

学校が掲げているのは、自由・闊達の校風のもとで、挑戦し、創造し、貢献する生き方をめざすこと。標準服が廃止された経緯も、生徒自身が運営する3日間の文化祭も、中1と高1に置かれた水田学習も、この一本でつながって見えます。決めてもらうのではなく、自分で決める。学習の組み立ても、その延長です。

ご家庭でできるいちばん大事なことは、この設計を頭に入れて、「学校が作ってくれる深さ」と「外で作る速さ」の配分を、毎年ひとつずつ確かめ直すことです。中1の余裕をどう使うかも、中3で焦るか腰を据えるかも、すべてここから説明がつきます。深さと速さの配分を決めかねる時期が来たら、どの単元から先へ出すかを決める段階から、リープエンジンを使ってください。

文責:リープエンジン編集部 ・ 最終更新 2026-07-25