筑波大学附属中学校・高等学校

中3で一度、区切りがある——筑波大学附属の6年の作り方

筑波大学附属中学校・高等学校は、東京都文京区にある共学校です。同じ「筑波大学附属」を冠する筑波大学附属駒場中学校・高等学校(世田谷区・男子校)とは別の学校ですので、まずそこを分けておきます。校名にある「附属」の意味も、先に一つ。筑波大学の教育研究への協力と、教育実習の受け入れを担う立場を表す呼び名で、そこから大学へ上がる道筋を指すものではありません。

この学校の6年でいちばん大事なのは、集団が一枚岩ではない、という点です。中1の学年には、併設の小学校から進んできた生徒が約55%います。中学から入った生徒は、すでに6年間を一緒に過ごしてきた集団と合流する形になります。中学から高等学校へ上がるところにも、もう一つの区切りがあります。学校自身の説明では、併設の高等学校へは内部試験などの審査をへて8割程度が進学しています。高校からの入学者も加わります。

押さえるべきは一つ、中学から高校へ上がるところに、審査という区切りがあるということです。多くの中高一貫校では中3から高1へそのまま続きますが、この学校の6年はそこで一度、制度上の区切りを持ちます。だから中学の3年間は「高校で立て直せばいい3年間」ではなく、そのまま高校へ進む土台をつくる3年間になります。この一点が、以下の各節すべての背骨です。

もう一つ、カリキュラムの側に決定的な特徴があります。各教科とも先取り学習を実施しません。 学校は、2期制のもとで深みのある授業を行い、先取り学習は実施せず、探究心や思考力の養成を主眼とした指導を行う、と説明しています。少人数制も習熟度別も、長期休暇中の講習もありません。主要5科の週あたりのコマ数は中1が18、中2が18.5、中3が19コマで、公立中学校の課程(18・18・19コマ)とほとんど変わりません。

一日の形も見ておきます。登校8時10分、50分授業を6時限(月曜は4時限)、下校は17時40分(冬期は16時40分)。土曜日は原則として隔週で休みで、休みでない週は50分×4時限の授業があります。

授業の量が公立の課程並みで、先取りもしない。だとすれば中学の3年間で積むべきものは、範囲の広さではなく深さです。

筑波大学附属の数学カリキュラムとつまずきやすいポイント

時間の量は公立とほぼ同じ。先へ出る設計は入っていない

数学は中1が週4コマ、中2が週3.5コマ、中3が週4コマ。公立中学校の課程(4・3・4コマ)と、ほぼ同じ量です。そして学校は、各教科とも先取り学習は実施しない、と明言しています。

中1の教室では、半分強が併設の小学校から進んできた生徒です。ただしこれは進度の差ではありません。数学の課程は週のコマ数のとおりで、内進生だけが先を走る作りにはなっていない。合流した側が確かめるべきは、周りとの距離ではなく、自分が中学の内容をどう受け取れているかのほうです。

そして、この課程には置かれていない前提が一つあります。中3が終われば高校の内容に足がかかっている、という前提です。前に出ないのは学校の意図であり、後れではない。中3の終わりに区切りが来る以上、この3年で仕上げるのは先の範囲ではなく、扱った範囲の確かさのほうです。

2期制の数学は、「保持」が主戦場になる

先取りをしないぶん、授業は一つの問題を深く掘る方向へ時間を使います。ここに2期制が重なると、固有の条件が生まれます。前期は4月から10月。範囲全体を強制的に思い出させられる機会である定期試験が、3学期制より間遠にしか来ないのです。

つまり、春に深く扱った問題を、試験が確かめに来るまでの長い期間、自力で持ちこたえさせる必要がある。週3.5コマの学年があるほど量の絞られた課程では、授業の回数が復習を兼ねることも期待できません。数学の主戦場は、深く扱った問題を数か月後にも自分の手で再現できる状態に保つこと——「保持」の側にあります。

クラスは人数でも習熟度でも分けないので、保持の仕組みは家庭側で持つしかない。形は単純で、深く扱った問題に日付をつけて残し、数週間おきに古いものから解き直す。試験の区切りが間遠な2期制を、家庭側の小さな区切りで刻み直すわけです。そこに中3の審査が重なります。中学の数学に残した穴は、高校で拾い直す前にその区切りをまたぐ。リープエンジンでも、外から何かを足す前に「数か月前に深く扱った問題が、いま自力で解けるか」を確かめ、保持が崩れている単元から埋めます。

筑波大学附属の英語教育と、6年間での伸ばし方

音で入れて、書いて出す往復が、課程の中にある

英語はどの学年も週4コマ。公立中学校の課程と同じ数で、うち1時間は英会話。各学年で外国人講師と日本人教師によるチームティーチングを実施している、と学校は説明しています。3年間ずっと週1時間、聞いてその場で返す負荷がかかり続ける課程です。この形で入った語や表現は、音とセットで頭に残ります。

出す側の機会は、英語の授業の外にあります。国語・社会の課題や学校行事でのレポート作成など、表現力をきたえる機会が多いことを学校は特色に挙げ、興味あるテーマを追究・解決する「総合学習」も全学年に設定。この課程には、音で入れて、自分の言葉に組み立てて書いて出す往復が組み込まれている。音から入った表現を、レポートで鍛えた「まとめて書く」力で出口へつなぐ——入口と出口は、学校が持っています。

家庭が受け持つのは、真ん中——語彙と読む量

課程が持っていないのは、真ん中です。見た瞬間に意味の出る語彙の量と、まとまった英文を読む分量。ここは週4コマだけでは積み上がり切らず、家庭側が受け持ちます。単語は、書ける状態より先に、音で入った語を「文字で見ても意味が出る」状態へ渡すこと。読む量は、短くていいので毎日の一本を決めること。読んだ本文は訳で終わりにせず、何がどうなった話かを一言でまとめておく——レポートで日々やっている作業の英語版で、2期制で試験までの距離が長いぶん、この一言が後から範囲を戻す手がかりになります。

ここで、中3の区切りに戻ります。審査の先では独自の教材を使った密度の濃い授業が待っており、中学で作った英語の土台は、区切りをまたいでそのまま先で使われます。しかもその土台は、単元の穴が見えやすい数学と違い、語彙が何語あるか、1年でどれだけ読んだか、という目盛りの見えにくい形で積まれます。測らないと、細っていることに気づけません。高2で第二外国語を選ぶ余力があるかも、そのとき英語が手のかからない教科になっているかで決まります。読む分量が家庭だけで確保しきれない時期に限って、アベセ(ABC)で語彙と本文処理の帯を外から一本立てる補い方も取れます。

定期テストと、6年間を見通した学習設計

2期制——区切りが少ないぶん、1回の範囲が広い

この学校は2期制です。前期が4月から10月、後期が10月から3月。3学期制の学校と比べると定期試験の区切りが少なく、そのぶん1回あたりの範囲が広くなります。

範囲が広い試験は、直前の数日では回し切れません。3学期制で通用した「2週間前から」が、そのままでは足りなくなることがあります。一段早く動き始め、ねらいを「広い範囲を余裕をもって一周し切る時間を作ること」に置いてください。順序は、範囲全体を浅く一周して穴を洗い出す → 見つかった穴だけを埋める → 間違えた問題だけを集めて二周目、です。

先取りをしない学校ですから、出る内容そのものは学年相当。範囲が難しいというより、区切りが少ないぶん量がまとまって押し寄せる形の負荷です。そして区切りが少なければ、「その単元がまだ使える知識になっていない」と教えてくれる点検表を受け取る回数も減ります。試験を待たず、週単位で仕上がりを見る習慣のほうが効きます。

長期休暇中の講習はありません。しかも2期制では、夏休みは学期の終わりではなく前期の途中に来ます。「一学期を締めてから休む」形にならないので、夏は仕切り直しではなく、前期の続きが待っている空白です。ここをどう使うかが、丸ごと家庭の設計に残ります。

授業は公立並み、学校にいる時間は濃い

主要5科の授業は公立並みの量なのに、学校で過ごす時間は濃い——この差の中身は、週2時間のホームルームアワー(HRH)で身近な生活を題材に「生き方」を学ぶこと、「総合学習」が全学年に置かれること、部活・研究会28にほぼ全員が加入すること(複数所属も可)。教科のコマを増やす代わりに、教科でない時間へ時間を割く構造です。そのうえ土曜は隔週で休みなので、週によって使える時間の形が変わります。

これらを削る話ではありませんが、この条件で家庭学習の時間が自動的に残ることもありません。寝る時刻を先に決めて割り付けること、行事や土曜授業で潰れる週の下限を決めておくこと。この二段構えなら、忙しい季節にも帯は残ります。土曜が休みの週にまとめて片づける組み方は隔週で崩れるので、平日に短い帯を置くほうがこの時間割には乗ります。

学年ごとに、守るものを変える

  • 中1:併設の小学校から進んできた生徒が約55%を占める学年です。途中から合流する側にとって、最初の1年は環境に慣れる時間でもあります。学習面では、中学受験のあとで途切れた習慣を戻し、家庭学習の帯を一本立てるところからで十分。千葉県富浦での「海浜生活」もこの学年です。
  • 中2:理科が増え、数学が週3.5コマになる学年。長野県黒姫での「高原生活」もここです。この年に週内で戻す型を作れるかが、後半に効きます。
  • 中3:数学と社会が増え、主要5科が週19コマに。修学旅行は文学・社会・自然・勤労体験などのコースから一つを選ぶ形。高校へ進む区切りを控えた学年でもあるので、積み残しを翌年に送らない、の一点に絞ってください。

筑波大学附属の進路設計——在学中の進路の組み立て

これは、筑波大学附属にお子さんが通われているご家庭に向けた、在学中の進路設計の話です。

進路の出方(学校の進路構造の一般傾向)

この学校の進路は、最初の区切りが中3の終わりに置かれていることから考えるのが正確です。学校自身の説明では、併設の高等学校へは内部試験などの審査をへて8割程度が進学しています。中学3年間の学習がそのまま高校へ進む土台になる——その関係が他校よりはっきり見えている、ということです。なお、審査の内容や基準は年度によって変わりますので、現在の扱いは学校配布資料や面談でご確認ください。家庭ができるのは中身を推し量ることではなく、日々の授業とその定着を学年ごとに締めていくことのほうです。

その先の大学については、外へ出て一般受験で決めるのが本線です。高校の作りも見ておきます。独自の教材や行事などテーマをあつかい、各教科とも密度の濃い授業が展開されます。高2では第二外国語としてドイツ語・フランス語・中国語が選択でき、高3では希望進路などに応じて授業を選びます。つまり、進路に合わせて課程が枝分かれするのは高3。それまではどの道も開けたまま進む形です。

そして、学校自身が「特別な受験体制はない」と述べています。受験のための特別な体制を組むのではなく、深みのある授業と探究心・思考力の養成を6年つづける。少人数制も習熟度別も長期休暇の講習も置かないという事実と、この姿勢は一本でつながっています。

だから、こう設計します

逆算の起点は、二つ置きます。

一つ目は、中3の終わり。目標は「中学の3年間で扱った内容に、自分で埋められない穴が残っていない状態」です。問われるのは進度ではなく、深さの側の仕上がりです。この3年に置く仕事は、進路を決めることではありません。数学は日を置いても解けるところまで、英語は語彙と読む量を測れる形で。理科・社会も「その場で覚えて流す教科」にしないこと。中1で合流したばかりの時期に、学習量の比べ合いを始める必要もありません。

二つ目は、高2の終わり。授業を進路に合わせて選ぶのが高3ですから、それまでは科目を絞る局面が課程の側から来ません。「文系にしたから数学は終わり」という切り方が入っていない、ということです。高3の選択が本当に「選択」として働くのは、それまでに落とした教科がない場合だけです。

区切りの話をしてきたので、最後に一つ、包み隠さず書いておきます。深く扱われた授業の中身を家で自分のものにできていて、英語と数学に穴がないなら、いま塾を探す段階ではありません。この学校は先取りをせず、探究心と思考力の養成に時間を使う設計です。回っているところへ外から枠を足すと、深く扱われた内容を自分のものにするための時間のほうが先に削られます。

手を借りるべきなのは、区切りまでに戻し切れないと分かったときです。週のうちに解き直しが戻らない、止まった単元が学期をまたいでいる、広い試験範囲を一周し切る設計が作れない——そうした兆しが見えたときに、崩れている部分だけ立て直せば十分です。足りない分を時間数で埋める提案は要りません。試験の区切りが少ない学校では、枠を増やすより「どの教科の、どこが、いつから止まっているのか」を先に特定するほうが効きます。

筑波大学附属の6年間を、見通しを持って

筑波大学附属中学校・高等学校(東京都文京区大塚)は、地下鉄有楽町線「護国寺駅」から徒歩8分、地下鉄丸ノ内線「茗荷谷駅」から徒歩10分。男子と女子がほぼ同数で構成される共学校です。創立から百三十余年、卒業生が各界で活躍し、さまざまな「附属会」のネットワークをつくっている、と学校は言います。

学校が掲げるのは「学校が発見の母である」という言葉です。中3の修学旅行は、前身の東京師範学校が1886年に「長途遠足」として実施したことに始まり、日本の修学旅行の発祥と言われています。団体競技のみの運動会、学芸発表会、週2時間のHRHで重ねる自治会の話し合い、そして先取りをせず探究心と思考力の養成に時間を使う授業。速く前へ出ることよりも、その場を深く掘って自分で見つけることのほうを、学校は選んでいます。

ご家庭でできるいちばん大事なことは、この設計を頭に入れて、「中学の3年間で積んだものが、高校へ進む土台としてそろっているか」を毎年確かめることです。2期制の広い範囲を早めに一周する理由も、中1で焦らない理由も、ここから説明がつきます。学年ごとに締める作業が家庭の手に余るようになったら、区切りまでに埋めたい教科をはっきりさせて、リープエンジンにお声がけください。

文責:リープエンジン編集部 ・ 最終更新 2026-07-31